独禁法特例法案、定額制乗り放題など先進サービスに道筋

 

 政府が29日の未来投資会議で方針を表明した独占禁止法の特例法案は、地方のバス事業者に対し、バスだけでなく鉄道など各交通手段を連携させた「定額乗り放題」など、先進的なサービス実現に向けた道筋をつけることになる。どこのバス会社が具体的に特例法の対象となるかは今後、詰める方針だが、赤字に悩むバス会社にとっては、経営改善と利用者利便の向上の両立を図ることができそうだ。(大坪玲央)

 独禁法の特例法案は、地方のバス事業者がサービスを維持することなどを目的とした場合に例外的に、合併や共同経営(カルテル)による経営力の強化を認める内容だ。

 これまでは、バス事業者が連携した定額乗り放題や運賃プールの導入に向けた協議をした段階で、独禁法違反のおそれを指摘され、頓挫するケースもあったという。競争の除外につながり、運賃がつり上がることになりかねないからだ。

 特例法案は、こうした新サービスや運賃制度に向けた協議を認めることになる。今後、全国の地方のバス事業者で、導入に向けた検討が進む見通しだ。

 月額定額制サービスをめぐっては、フィンランドの首都ヘルシンキでマースグローバル社が提供しているサービス「Whim(ウィム)」が、世界でも先進事例とされている。定額料金で、地下鉄やバスなどの公共交通機関のほか、タクシーやレンタカー、貸し出し自転車なども、一定の条件で乗り放題になる。

 また、運賃プール制は、ドイツのハンブルクですでに導入されており、国内でも過疎地の運行事業者に対し、都心部を運行する事業者が収入を補(ほ)填(てん)することで、過疎地の路線を維持することが期待されている。

 日本でも、地方のバス事業者に加え、地方路線の維持方策を検討している航空各社やJRなどが、地方で各種交通手段を連携させる「地方版MaaS(マース)」を創設する動きにつながりそうだ。

 もっとも関係者は、「地下鉄やバスなどが公的機関に一括運営されているヘルシンキと違い、日本では各交通機関を民間事業者が運営しているため、調整が困難だ」とも指摘。日本での定額制サービス導入には、独禁法以外のハードルも多そうだ。