日本国内でのキャッシュレス化が進んでいます。政府は「2025年までに、(日本の)キャッシュレス決済の比率を40%にする」と掲げましたが、中でもQRコードやバーコードを利用する決済方法がここ数年で急増しています。
「○○ペイ」はなぜ急増したのでしょうか。本記事では、今さら聞けないキャッシュレス決済の疑問をまとめてみました。
そもそもスマホ決済とは?
スマホ決済とひと言でいっても、その種類はさまざまです。iPhoneを使う「Apple Pay」やAndroidスマホを使う「Google Pay」、電子マネーのモバイル版である「モバイルSuica」「nanacoモバイル」「iD」などもスマホ決済です。最近では「PayPay」「LINE Pay」などQRコード決済も増えています。
QRコード決済が盛り上がっている理由の1つは、ユーザーが利用しやすいこと。QRコード決済なら、Apple PayやGoogle PayのようにスマホのOSに関係なく、どのスマホでも利用できます。
店舗側にとっても、QRコード決済は導入しやすいサービスといえます。基本的にスマホ決済をするには店舗側で読み取り用の端末を用意しなければなりませんが、QRコード決済では必要ありません。決済サービス会社に払う手数料も、クレジットカード会社などに比べて低く設定されています。
大手チェーン店ならともかく、小規模店舗や個人店舗の場合、コストをかけずに決済サービスを導入できることは非常に重要です。こうした特徴もあり、キャッシュレス化に貢献できるサービスとして、国も普及に力を入れています。
QRコード決済サービスの種類は?
この1~2年で急速に増え、いまやQRコード決済サービスの数は20以上になりました。NTTドコモの「d払い」、KDDIの「au PAY」、ソフトバンク系列の「PayPay」、楽天の「楽天ペイ」や、いち早くサービスを開始した「Origami Pay」、LINEの「LINE Pay」、メルカリの「メルペイ」などがあります。
5月にはゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」、7月にはファミリーマートの「ファミペイ」も始まり、銀行やコンビニにも独自のサービスが広がっています。
ファミペイと同時期にセブン&アイ・ホールディングスの「7pay」も始まりましたが、サービス開始2日目には不正アクセスが発覚。9月30日でサービスは終了する予定です。このようなニュースを聞いて、「やっぱりスマホ決済なんて怖くて使えない」と考えた人も多いでしょう。
サービス提供会社に不備がある場合は、被害金額を補償してもらえるケースがほとんどですが、そもそも不正利用されていることに気付かない人もいます。セブン&アイのような大手企業のサービスなら安心だと思っていた人もいるでしょうが、犯罪の手口は巧妙化しており、その認識も変わりつつあります。
クレジットカード決済と同様に、スマホ決済でも支払い履歴を確認できます。「怖いから使わない」のではなく、身に覚えがない支払いがないかどうか、自らチェックするのが重要です。
利用するメリットは?
そもそもスマホ決済を利用するメリットは何でしょうか。真っ先に思いつくのは、財布を持たなくてもスマホだけで支払いができることでしょう。お釣りなどのやりとりもなく、財布から小銭をじゃらじゃら出す必要もありません。
しかも今は○○ペイの乱立により、各社がお得なキャンペーンを頻繁に行っています。その口火を切ったのがPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」。テレビCMを流していたこともあり、家電量販店に多くの人が殺到し、大きな話題になりました。
日本は少子高齢化で今後ますます労働人口が減少していくので、店舗の無人化や効率化のためにも、スマホ決済の普及は重要です。
しかし、財布から現金がなくなっていくのに比べて、スマホ決済は支払った感覚が希薄になりがち。無駄遣いが心配な人は、毎月のチャージ額をあらかじめ決めておいたり、こまめに利用履歴を確認したりしましょう。
スマホを落としたら、どうする?
スマホ決済に不安を抱く人の多くが、「スマホを落としたら、どうすればいいんだろう」という疑問を持っています。
紛失したスマホが見つかりそうにない場合は、契約しているキャリア事業者に連絡してスマホの画面を遠隔でロックしてもらいましょう。iPhoneの場合は、iCloudの「iPhoneを探す」→「紛失モード」からロックできます。スマホ決済は基本的にスマホの電源が入っていないと使えないので、ロックすれば不正利用の心配もなくなります。
最近のスマホは指紋や顔など生体認証機能が付いているものが増えてきたので、パスコードに加えて生体認証も設定しておくとさらに安心です。
機種変更したいときは?
Androidスマホの場合は、利用しているサービスごとに操作します。電子マネーで事前にチャージするタイプの場合、残高をクラウド上に預けるなどの手続きが必要です。QRコード決済の場合は、新しい端末に同じアプリをインストールしてログインします。
スマホのバッテリーが切れたら使えない?
基本的にスマホ決済はスマホの電源が入っていないと利用できません。ただし、モバイルSuicaは微量の電気信号で決済できるので、バッテリーが切れたと思っても、支払いができることもあるようです。
悪用されることが心配
第三者による不正利用の問題はいまも気になるところです。QRコード決済先進国の中国では、シェアバイクに付いているバーコードの上に別のバーコードを貼り、利用金額を搾取するという事件がありました。
また、レジ前でバーコードをアプリに表示させ、支払う準備をしていたところ、背後からバーコードをスマホカメラで撮影されて悪用される事件も起こっています。
日本ではそのような事件は発生していませんが、自分でバーコードを読み取って支払うときなどは、支払い先の名前が合っているかどうかを確認しましょう。
バーコードには有効期限があり、通常3分から5分ほどで利用できなくなります。そのため背後からカメラで撮影されても悪用されることはまれだと思いますが、アプリにバーコードを表示させたら人から見えないようにしておくといいでしょう。
チャージしたお金は現金化できる?
スマホ決済の支払い方法は、登録した銀行口座からのチャージの他、クレジットカードやデビットカード、毎月の携帯料金との合算、たまっているポイントの充当などさまざまです。事前チャージを利用するのはモバイルSuicaなどプリペイド式の電子マネーと、QRコード決済です。
電子マネーの場合は解約を除き、基本的にチャージ残高を現金化することはできません。QRコード決済も同様ですが、中にはLINE Payやメタップス傘下のpring社が提供する「pring」(プリン)のように手数料を支払うと現金化できるサービスもあります。
いずれもセブン銀行ATMで出金でき、銀行口座にも振り込めます。手数料は共に216円(pringは1日1回まで無料)。LINE Payはセブン銀行ATMで1日に1万円まで、銀行口座には1日10万円までの出金が可能。一方、pringは1日10万円まで出金できます。
多くの○○ペイが乱立していて違いが分かりにくいですが、一度使ってみるとキャッシュレス決済は便利なものです。ポイント還元キャンペーンを利用すればお得に買い物ができますが、まずは自分がよく行く店舗で利用できるサービスを使ってみるのもいいのではないでしょうか。(ITmedia)