かんぽ生命保険、1.9万件乗り換えできず 旧契約復元など対応へ

 
日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を傘下に持つ日本郵政の本社=東京・霞が関

 かんぽ生命保険は27日、保険の不適切な販売があった問題で、旧契約の解約後に健康状態の悪化を理由に新契約を結べなかった事案が2014年4月から19年3月の5年間で1万8900件に上ると発表した。さらに調査を進める方針で件数が拡大する可能性もある。該当する顧客と面談して契約時の状況などを調査し、元の契約を復元するといった個別対応を行う。

 同社は顧客の不利益になるような保険の乗り換えが発覚した後の24日の会見で「不適切とは認識していない」としたが、27日の説明会では一連の問題の責任を問われ、「責任がなければ、このような対応はしない」(幹部)と述べた。

 調査によると、旧契約を解約した後に健康状態の悪化が判明して新契約が断られ、無保険になった事案は1万5800件、乗り換え時に健康状態の悪化を告知せずに契約が解除になったのが3100件あった。

 これとは別に、17年10月の医療特約の新商品の発売後、旧契約のまま特約を切り替えれるのに、契約自体を変更していた事案も5000件あることが判明した。

 今後は不利益についての認識や顧客の意向などを確認し、調査結果に基づいて旧契約の復元などを行う。

 もっとも、今回の調査は同種類の保険を一度解約して再契約し、契約時の年齢が上がって保険料が高くなる事案は含まれていない。「調査して対象に入れるかを検討する」(幹部)。

 一連の問題は保険の販売を担う郵便局員に対する高い販売目標が一因とみられ、日本郵政グループは営業ノルマをなくすなどの営業評価の見直しを検討する。

 また、顧客が乗り換えで無保険ならないよう旧契約を下取りする形で新契約に加入できる「契約転換制度」を数年内に導入する方針であるなど、再発防止に向けて社内システムの改善にも取り組む方針だ。

  ■かんぽ生命保険の発表のポイント

 一、健康状態の悪化を理由に再契約できなかった事案が、2014年4月から19年3月の間に約1万8900件あった。

 一、内訳は病気にかかり再契約できなかった事案が約1万5800件。病気などを正しく告知せず契約が解除になった事案が約3100件。

 一、契約時の状況などを調査。不適切販売が確認されれば、乗り換え前の契約に復元。

 一、特約の切り替えで対応できた可能性があるのに、旧契約を解約して新契約を結び直した事案が17年10月以降で約5000件あった。

 一、調査結果は、20年3月末をめどに公表。