【eco最前線を聞く】2リットルペットボトルで28.3グラム 最軽量更新

 
国内最軽量の2リットルペットボトルの注ぎ口の部分(キリンビバレッジ提供)

 □キリンビバレッジ生産本部 生産部生産管理担当・坪倉彩主任

 キリンビバレッジは、環境にやさしいペットボトルの開発に取り組んでいる。飲料用の2リットルペットボトル容器の注ぎ口の部分を改良し、国内最軽量となる28.3グラムの容器を開発し、4月から「キリン アルカリイオンの水」で導入した。新容器の開発に携わった生産本部生産部生産管理担当の坪倉彩主任は「当社の容器は元々、国内最軽量だったが、さらに更新することができた」と胸を張る。

注ぎ口部分に工夫

 --軽量化に着手した経緯は

 「ペットボトル容器の軽量化は、飲料各社でしのぎを削っている。当社は2015年3月に2リットルペットボトルの『キリン アルカリイオンの水』のデザインを見直し、国内最軽量となる28.9グラムを実現した。しかし、飲料プラスチックによる海洋汚染問題などを受け、キリンホールディングスはプラスチックの資源循環を進める方針『キリングループ プラスチック資源循環ポリシー』を掲げており、環境負荷軽減の観点からペットボトルのさらなる軽量化に挑んだ」

 --新容器の特徴は

 「キャップを閉めるために付けられる注ぎ口の部分のネジ山の厚みを薄くし、ネジの長さを従来の194ミリメートルから130ミリメートルに短くした。また、ネジ山の厚みは1周目と2周目で変えており、2周目を1周目よりも薄くしている。キャップを締める際に2周目は1周目より力がいらないので2周目を削った。こうした工夫により、従来よりも0.6グラムの軽量化に成功した」

 「新容器のメリットは軽量化だけにとどまらない。ネジの周回が短くなったことで、摩擦が減り、従来よりも約18%少ない力で開栓できるようになった」

 --注ぎ口の部分に着目した理由は

 「ペットボトルの胴の部分の軽量化は限界に近づいているからだ。胴の部分の厚みをこれ以上薄くすると、容器の強度が保てない恐れがある。強度が低いと商品の保管中や輸送中などにペットボトルが壊れて液漏れしてしまったり、消費者が容器を持った際にこぼれたりしてしまう。このため注ぎ口の部分の軽量化を進めた」

 --注ぎ口の部分のさらなる軽量化は

 「非常に難しい。これ以上ネジの部分を薄くしたりすると、キャップとの密閉性に問題が生じる恐れがある。そういった意味で新容器は必要な品質を維持したうえで軽量化ができた。改良した注ぎ口の部分は現在、特許出願中だ」

最低限の設備投資額

 --新容器による環境面での効果は

 「18年の販売数量を基に試算すると、製造に使用するペット樹脂は年間約107トン、二酸化炭素(CO2)排出量は375トン削減することができる」

 --設備投資は

 「金額は明かすことができないが、最低限の投資に抑えることができた。一般的にこうした新容器の導入は工場の製造設備などが更新される際、合わせて行われる。もっとも、今回も生産設備は変えたが、一部製造工程で新たな金型の導入といった微修正レベルにすぎない。工事期間も最低限にとどめた」

 --新容器は水以外の商品にも広げるのか

 「500ミリリットル、1.5リットルといった2リットル以外の容器にも広げることを検討している。ただ、実現するには、生産設備などを改良する必要があるため、簡単にはできない」

【プロフィル】坪倉彩

 つぼくら・あや 早大大学院先進理工学部生命医科学科修了、2014年入社。湘南工場品質保証担当、湘南工場製造担当を経て、18年から現職。30歳。横浜市出身。