東京地検、ゴーン前会長4度目逮捕 不正追及、ルノーも本腰

 

 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長(65)が、中東オマーンの販売代理店側に支出された日産の資金を不正流用したとして、東京地検特捜部は4日、特別背任容疑で再逮捕した。逮捕は4回目。今回の逮捕を受け、日産自動車と仏ルノーの双方で“ゴーン離れ”に拍車がかかりそうだ。

 ゴーン容疑者は3日までに自身のツイッターを開設、11日に記者会見を開くと公表していたが開催は難しい情勢。日産の現経営陣を激しく攻撃するともみられていただけに、西川(さいかわ)広人社長らには都合のいい展開とも言える。日産は8日の臨時株主総会で、ゴーン容疑者を取締役からも解任し完全に排除する。

 ルノーは当初、ゴーン前会長の不正追及に消極的で、日産との間に不協和音が生じていた。だが1月の新体制移行後は方針を転換した。昨年12月、ゴーン氏が特別背任容疑で再逮捕され、「会社の私物化」疑惑が強まったことが契機だった。ルノーは3日の取締役会後、ゴーン容疑者に関して、ルノーの会長予算から約1000万ユーロ(約12億5000万円)が支払われたとされる中東オマーンの販売代理店への不審な支出を、仏司法当局へ通報したことも公表。一連の事件の本質が、西川氏らとの権力闘争とする見方に対し、ゴーン容疑者個人の犯罪だという認識が優勢となりそうだ。

 社内調査の結果から既にゴーン被告の不正を“認定”している日産は逮捕を冷静に受け止めている。ただ、ゴーン容疑者の記者会見など、情報発信の動きには神経をとがらせる。日産関係者は「また(事件を)他人のせいにするのだろうか。そういう態度には、社内の従業員や販売現場も『勘弁してほしい』という状況だ」と話す。

 6月下旬の定時株主総会で本格的な経営刷新に踏み切る日産では、人事などをめぐり緊張感が高まっている。再逮捕されたとはいえ、ゴーン容疑者側の今後の情報発信が、事件を防げなかった西川氏の責任論を後押しするなど、新体制の検討に影響を与える可能性は残る。(高橋寛次)