日本初の民間ロケット発射場を正式決定 和歌山・串本
本州最南端の和歌山県串本町から日本初の民間ロケットを打ち上げる構想で、キヤノン電子やIHIエアロスペースなどが出資する宇宙事業会社「スペースワン」(東京)は26日、発射場を町内の田原地区に建設すると正式に発表した。県庁で進出協定の調印式があり、太田信一郎社長は「県や町から強力な支援をもらった。自治体や地域住民と緊密に連携し、国際競争力のあるサービスを実現したい」と意欲をみせた。
民間ロケットは近年、搭載する人工衛星の小型化が進んだことで、気象観測や通信分野などへの活用範囲が拡大している。
同社によると、発射場は年内に着工し、2021年度に運用開始。20年代半ばには年間20機の打ち上げを目指すとしている。
予定地は約15ヘクタールで、ロケットの組み立て棟や保管庫なども設置する。土地は約7割を保有する串本町が無償貸与。安全対策として同県那智勝浦町も含む周辺の土地も確保する計画で、地元地権者と協議を進めている。ロケット搬入用などに国道と接続する専用道路も建設する。
総事業費は非公表だが、32億円分は県の無利子融資制度を活用。土地の調査や造成などに充てる計画。
ロケットは固体燃料3段式で、全長約18メートル、重量約23トン。高度約500キロの太陽同期軌道に打ち上げ、小型衛星は重量150キロまで搭載できる。申請から1年以内で打ち上げ可能といい、太田社長は「顧客の希望するタイミングで打ち上げられる柔軟性がビジネスの優位性になる」としている。
調印式には太田社長や仁坂吉伸知事らが出席。県は発射場誘致による建設や集客などの経済波及効果を10年間で670億円と試算しており、仁坂知事は「新たな観光資源、宇宙関連産業の集積なども期待できる。建設予定地に選定してくれたことに感謝する」と述べた。
同席した田嶋勝正・串本町長は「地権者や住民、漁業者などに合意いただき、うれしく思う。南紀地方活性化の起爆剤になれば」、堀順一郎・那智勝浦町長は「(打ち上げ見学用の)観覧場の整備など、おもてなしについて検討していきたい」と話した。
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