【検証エコノミー】石油元売り再編最終章 出光・昭シェルが4月1日統合、脱国内中心が課題
石油元売り国内2位の出光興産が4月1日、4位の昭和シェル石油を完全子会社化し、経営統合する。出光の大株主である出光創業家が一時は強硬に反対して暗礁に乗り上げた影響で統合時期は大幅に遅れ、ライバルの先行を許した。元売り各社の経営を支えてきた石油製品の国内需要は緩やかな減少が見込まれる中、新会社は成長領域の拡大や海外展開で企業としての競争力を維持できるかが問われる。(森田晶宏)
東京・丸の内の高層ビル「JPタワー」の28階。もともと出光の需給部が入っていたフロアに昨年4月、昭シェルの供給部が東京・台場の同社本社から引っ越してきた。原油の調達や石油製品の輸出入を担う「需給部門」に属する出光の約80人と昭シェルの約80人が同じオフィスで働き、机を並べている。
実際の統合前の「同居」から間もなく1年。出光需給部の山田秀樹課長は「目指すのは強い会社をつくること。『for the new company(新会社のために)』が合言葉になっている。あとは成果を出すだけだ」と強調する。昭シェル供給部の伊藤宏和課長も「(出光社員と)身近に接し対話を重ねる中で、昭シェル社員の考え方や見方の幅が広がってきた」と手応えを示す。
長年、異なる企業文化や仕事の進め方で育ってきた両社の社員がオフィスをともにする取り組みは、需給部門のほか、製造や環境安全、人事など、多くの部門で行われている。「最も重要な社員の融合」(出光首脳)を促すのが狙いだ。
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出光と昭シェルの連結売上高を単純合算すると約5兆8千億円。新会社は、国内最大手のJXTGホールディングス(HD)の約10兆3千億円に次ぐ規模となる。今回の統合で大手はコスモエネルギーHDを含む3グループに集約される。元売りは合従連衡の歴史をたどってきたが、新会社の会長に就く出光の月岡隆会長は「再編の最終段階を迎えた。一つの新たな秩序づくりができた」と話す。
ただ、出光創業家の抵抗で足踏みを余儀なくされた間に、旧JXHDと旧東燃ゼネラル石油は平成29年に統合し、巨大元売りのJXTGHDが誕生。出光・昭シェルは先を越された。
JXTGは売上高、給油所数ともに出光・昭シェルの約2倍で、ガソリンなど燃料油の国内販売シェアは約5割に達する。統合効果も30年度に820億円、31年度に1千億円以上と順調な伸びを見込む。JXTG首脳陣は「出光・昭シェルの統合で新たに何かをするわけではない。影響は受けない」と静観の構えだ。
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石油ビジネスの将来は決して明るくない。経済産業省によると、石油製品の国内需要は29年度、ピークだった11年度と比べて29%減少。人口減やエコカーの普及を背景に、今後も年率約2%減っていく見込みだ。国内を中心に石油ビジネスを営むという従来の事業構造からの脱皮は、元売り各社の共通課題といえる。
出光はこれまでも、テレビや携帯端末に使われる有機EL材料が将来的な成長分野として期待を集めてきた。海外展開でも、出光が他社との合弁で手がけるベトナムのニソン製油所が昨年11月に運転を始めた。
出光・昭シェルは昨年10月、原油の共同調達や国内7製油所の石油製品の融通などで33年度に統合効果600億円▽統合から3年間の累計で最終利益5千億円以上-を柱とする経営目標を打ち出した。今年10月にも長期ビジョンを含めた中期経営計画を公表する。
みずほ証券の新家法昌シニアアナリストは「JXTGとの対比でみても、統合効果600億円はそれほど高いハードルではなく、達成が必要な水準」とみる。中期計画については「足元では海外や石油化学の市場環境に不安感が拭えない中、それを踏まえても昨年10月に示した経営目標が達成可能とみているのかが重要」と指摘。また、「海外や(有機EL材料などの)高機能材、再生可能エネルギーといった、従来の中核ビジネス以外の分野でどの程度の利益貢献を見込むのかにも注目したい」と話した。
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