自動車大手、会社形態変更の動き 指名委・監査等委設置会社へ

 
大手乗用車メーカーの会社形態

 コーポレートガバナンス(企業統治)強化や意思決定の迅速化を視野に、会社の組織形態を変更する動きが自動車大手で広がっている。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(64)の事件を受けて同社の企業統治改善策を検討する特別委員会は、今月27日にも日産への提言をまとめるが、その柱として「指名委員会等設置会社」への移行を盛り込む方向で調整中。マツダや三菱自動車も組織形態を変更する方針だ。上場する乗用車メーカー7社中、国内で一般的な「監査役会設置会社」が少数派となる可能性がある。

 指名委等設置会社は、過半数を社外取締役で構成する指名委員会や報酬委員会を設置する形態。ゴーン被告が“お手盛り”で役員報酬を決めていたとされることなどから、外部からのチェック機能を高める。

 この仕組みでは社外取締役が大きな役割を果たす。特別委は、日産の取締役の過半数を社外取締役が占める体制にすることや、取締役会議長を社外取締役が務めることも提言する方向だ。

 日産の取締役会は提言を受けて新体制を検討し、6月下旬の定時株主総会で正式に決める。実質的に社外取締役の増員が必要で、人選などに時間がかかり、移行は来年以降になる可能性もある。

 移行を先に打ち出したのは、日産と同じくゴーン被告が会長を務めていた三菱自だ。日産との共同出資会社を舞台にした不正が明らかになったことを受け、益子修会長兼最高経営責任者=CEO=(70)は、「ガバナンスの中心的役割を果たす取締役会の監督機能を、もう一段強化することが待ったなしの課題との思いを強めた」と強調。来年6月の定時総会での移行を目指す考えを示した。

 上場する大企業の形態には、指名委等設置会社▽監査役会設置会社▽社外取締役主体の監査等委員会が経営をチェックする「監査等委員会設置会社」-がある。監査等委設置会社にはホンダが平成29年に移行したほか、マツダも今年6月の定時総会で移行する予定だ。同社関係者は「自動車業界の変革期に臨むため、取締役会での決定事項の一部を業務執行取締役に委任し、意思決定のスピードを上げる」と説明する。

 指名委等設置会社は、経営の監督と業務執行機能を完全に分離した形態だが、いち早く導入した東芝で27年に不正会計問題が発覚するなど、「仏作って魂入れず」の状態になるケースもある。野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は「経営陣の外から統治機能を働かせられるような社外取締役をそろえることが重要になる」と指摘している。(高橋寛次)