関電、高コストの石油火力を休廃止 需要減少に対応

 

 関西電力は1日、和歌山県海南市にある石油火力の海南発電所(出力計210万キロワット)を4月1日に廃止すると発表した。同県御坊市にある石油火力の御坊発電所2号機(同60万キロワット)も同日から休止する。省エネの進展などで電力需要が減少傾向にある中、発電コストの高い石油火力への依存度を下げる。

 海南発電所は発電機が4基あり、昭和45~49年に運転を開始。関電は1~3号機を平成29年4月から休止し、4号機のみを急な需要増が発生した際の予備電源として稼働させていたが、安定供給に支障がないとして廃止を決めた。同発電所は取り壊す。関電の発電所の廃止は18年4月に石油火力の高砂発電所を廃止して以来、13年ぶりとなる。

 関電は昨年、運転再開のめどが立たず「長期計画停止中」としていた宮津エネルギー研究所(京都府宮津市)の石油火力2基の再稼働も事実上断念した。関電の石油火力は4月以降、長期計画停止中を除いて御坊を含む3カ所となるが、うち1カ所はすでに液化天然ガス(LNG)など石油以外への燃料転換を進めている。

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 石油火力の運用見直しは全国の電力会社で避けられない流れになりつつある。九州電力は昨年、豊前発電所(福岡県豊前市)など3カ所、計6基の廃止と停止を発表した。計画が全て実現すれば、来年度中にも管内の石油火力による発電がゼロになる見通しだ。

 各社が縮小に動く理由は主に2つある。1つは、省エネの進展や電力小売り全面自由化による競争激化で販売電力量の落ち込みが続いていることだ。

 関電の場合、平成29年度の販売電力量は1152億キロワット時と7年連続の減少。ピーク時の22年度(1510億キロワット時)から約24%減らしており、今後大幅な増加は見込めない情勢だ。

 そのうえ、管内では出力計410万キロワットの原発4基が再稼働した。稼働できる石油火力の最大出力は計360万キロワット(燃料転換した発電所は除外)で、計算上は石油火力を全て廃止しても、供給力は原発で十分代替できることになる。

 もう1つの理由はコスト高だ。経済産業省の26年時点の試算では、石油火力の発電コストは1キロワット時当たり30・6円~43・4円で、液化天然ガス(LNG)火力や石炭火力、原発と比べて2~4倍程度高い。最近は原油価格も高騰しているため、石油火力を動かさないほど価格競争力が高まるというメリットもある。

 関電は来年以降に原発3基(計247・8万キロワット)の再稼働を予定しており、石油火力の縮小はさらに進む可能性がある。ただ、石油火力は猛暑などによる急な需要増に対応しやすい側面もあり、関電幹部は「安定供給との兼ね合いで判断していく」としている。