JR東日本、スイカ簡易版システム導入へ 全域カバーで電子マネー経済圏づくり
JR東日本の深沢祐二社長は6日までに産経新聞のインタビューに応じ、同社が展開する交通系ICカード「Suica(スイカ)」で、現状よりも導入費用を大幅に軽減する簡易版の新システムを早ければ来年度中にも導入する方針を明らかにした。現在、東北地方などJR東管内でもスイカ未導入エリアがあるが、簡易版で管内全域での導入を想定する。
政府がキャッシュレス化を推進していることに対応し、スイカを利用できる環境を大幅に増やし、交通機関や小売業での採用を進め、決済機能などの社会共通基盤としての存在感を高める狙いだ。
現在のスイカは自動改札での使用を前提にしているため、カードと端末機間のデータのやりとりを高速でさせる。端末機には高度の処理能力が欠かせず、端末価格が高価になっていた。その結果、駅での導入は利用者の多い首都圏や仙台圏などに限定されている。
深沢氏は、「クラウド技術を使い、端末側で情報を持たないシステムにすることで、導入する際のコストを引き下げる」と、簡易版の開発の狙いを強調。現在のスイカが過剰な性能となっていることから、データの処理量や速度を落としても、十分利用できるものにする考えだ。
既に、JR東は地方のバスなど地域交通事業者向けに、運賃支払い用のICカードにスイカ決済の機能を搭載する「地域連携ICカード」の開発を表明している。地域交通事業者にとっては、スイカの新システムを活用することで、スイカ決済の導入費用を軽減できる。同事業者の導入が進めば、地方の外食や小売り店舗での導入の動機づけにもなる。
JR東は平成30年度からの10カ年の中期経営ビジョン「変革2027」で、スイカや自社発行のクレジットカードの会員情報から得られる移動、購入や決済情報を分析することで、新しい生活サービスの創出を目指している。深沢氏は、「(電子マネー経済圏づくりを)各社がやろうとしているが、どういう方向に進むかは分からない。われわれはスイカをより使いやすくして他社との連携を広め、共通基盤化する」と述べた。
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