【遊技産業の視点 Weekly View】新規則機リリースによる市場の変化注視

 

 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 射幸性を抑制して遊びやすさを重視した新規則機が次第に市場にリリースされ始めている現状だが、業界はそれによる市場の変化を慎重に観察しておく必要がある。

 事業者であるパチンコホールのKPI(重要業績評価指標)は新規則機の「収益力」になると思われるし、メーカーのKPIは新規則機の「販売台数」ということになるかもしれない。だが、業界全体のKPIは「アウト数の総量」であるべきだと私は考えている。ちなみに、アウト数とはプレーヤーが発射するパチンコ玉の数を意味し、遊技機の稼働率が上昇すると、これに応じて増加するものである。

 1円パチンコに代表される「低貸玉パチンコ」の普及状況を考えると、プレーヤーがある程度の遊びやすさを求めていることに疑いはない。そのニーズに業界全体で応えるという意味では、現在登場し始めている新規則機に対するプレーヤーの反応は業界の将来を占う上でも重要なものとなる。

 全国のパチンコホールの数は減少している。パチンコホールの大型化が進んでいるとはいえ、パチンコホールの減少に伴い全国の遊技機設置台数の総数も減少している。よって、業界全体のKPIを、パチンコ業界内の指標の1つである「平均稼働(平均アウト)=総アウト数÷総設置台数」とした場合、マーケットの反応を正しく読み切ることはできない。

 大衆娯楽としての存在価値を追求するのであれば、遊びやすくなった新規則機によって総アウト数が増加するという現象が生まれなければならないのだ。身近で遊びやすい大衆娯楽としてのパチンコの存在価値を再認識し、より多くの人々が遊技参加した結果、総アウト数が増加したというのが本来あるべき姿だと感じる。

 新規則機が日本中のすべてのパチンコホールの隅々まで行き渡ったとき、われわれは総アウト数の増加を果たして実感できるだろうか。新規則機について考える上では、これまで以上にマーケット全体の反応を注視する姿勢が重要になると思われる。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。