マッサージ業・接骨院の倒産が激増 過当競争で不正広告や不正請求も横行

 
※写真はイメージです(Getty Images)

 街中でよく目にする「指圧、マッサージ」や「接骨院、整体」の看板。業界の生き残り競争は熾烈で2018年の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は過去10年で最多を記録した。倒産した「マッサージ業、接骨院等」の半数は個人企業で、小・零細規模が多いのが特徴。さらに業者間の過当競争から不正広告の横行、不正請求の増加も目立っている。(東京商工リサーチ特別レポート)

◆2018年の倒産は過去10年で最多

 本調査の「マッサージ業、接骨院等」は、東京商工リサーチの業種コードの「療術業」から抽出した。具体的には、マッサージ業、整骨院、鍼灸院、整体などを含む。

 2018年(1-12月)の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は93件(前年比36.7%増、前年68件)と前年より大幅に増加した。2009年以降の10年間では最多となり、5年連続で前年を上回った。

 負債総額は20億2700万円(同106.8%増、同9億8000万円)に達し、前年より2倍増に膨らみ、10年間で最大になった。

 ただ、負債10億円以上の大型倒産はなく、同5千万円未満が83件(前年比22.0%増)と、小・零細規模が9割弱を占めた。平均負債額は2100万円(前年比50.0%増、前年1400万円)にとどまった。

◆個人企業が過半数、同業者の競争厳しく

 資本金別では、「個人企業」が52件(前年比18.1%増)で、全体の過半数(構成比55.9%)を占めた。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が25件(前年比56.2%増)、「5百万円以上1千万円未満」が8件(同166.6%増)と続く。「5千万円以上」は発生がなかった(前年ゼロ)。

 従業員別では5人未満が85件(前年比30.7%増)と9割にのぼり、小規模・零細企業の倒産が多いことを裏付けた。 

 原因別では、「販売不振」(業績不振)が73件(前年比37.7%増)と最も多かった。全体に占める構成比は78.4%で、同業者間での競争の厳しさを映し出している。

 形態別では、事業消滅型の破産が78件(前年比25.8%増)と全体の8割を占めた。次いで、主に個人再生手続きによる民事再生法が15件(前年比200%増)と3倍増と急増した。 

 地区別では、全国9地区のうち、北陸と四国を除く7地区で倒産が発生した。最多は近畿の42件。次いで、関東22件、中部17件、九州6件、中国4件、北海道1件、東北1件の順。前年比では、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国の6地区で前年を上回った。

◆無資格のマッサージ店も林立

 厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、マッサージ業他の施術所(あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを行う施術所と柔道整復の施術所などを含む)は、2006年に10万8139か所だったが、2016年は13万6460か所に増加。この10年間で2万8321か所(26.1%増)増えた。

 就業状況では、就業あん摩マッサージ指圧師が2006年の10万1038人から、2016年は11万6280人(15.0%増)に増加。このほか、就業はり師が42.5%増(8万1361→11万6007人)、就業きゅう師が42.6%増(7万9932→11万4048人)、就業柔道整復師が76.0%増(3万8693→6万8120人)と、いずれも大幅に増えている。

 柔道整復師は、国家資格を取得できる養成校の増加も背景にあるとみられる。

 最近、マッサージ業や接骨院等の不正広告が全国的に横行している。不正広告には、「○○療院」、「○○治療所」といった、病院または診療所と紛らわしい名称や適応症、効果・効能等の明示、料金表示などを店頭やチラシなどに掲示することも該当する。

 こうした不正広告が増えた背景には、同業者の増加による過当競争が挙げられる。あん摩マッサージ指圧師等は、国家資格だが、最近は無資格のマッサージ店なども林立し、競争激化に拍車をかけている。

◆早過ぎる一本立ちも問題か?

 さらに医師の診療報酬に当たる「療養費」で、接骨院など骨折や捻挫などの施術にあたる柔道整復師による不正請求が後を絶たない。一例として、白紙の療養費支給申請書に先にサインをさせ、架空・付増請求するケースのほか、無資格者による施術請求も行われているという。

 関係者からは、柔道整復師はかつては養成校卒業後、5~10年ほど実務勤務した後、独立開業することが一般的だったが、最近は卒業生の約2割が資格を取得直後、すぐに開業し、「十分な知識や経験がないまま、不正行為に手を染めるケースもある」との指摘もあり、業者間の過当競争が沈静化する気配はうかがえない。

 また、創業者支援の制度融資も「マッサージ業、接骨院等」の起業を促す要因になっているとの見方もある。

 今後も、しばらくは業界内で新規開業と廃業の出入りの激しい動きが続くことが想定される。このため小・零細業者を中心にした淘汰の流れは注視することが必要だろう。

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