iPS細胞活用、生産の確立段階へ

 
大日本住友製薬は細胞識別の高効率化に成功した

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもとにした医薬品の製造に向けて、製薬各社が研究機関とともに開発を加速している。多くの人が治療を受けられる機会を広げるためには、保険適用される医薬品として国の承認と、安定供給できる体制の構築が不可欠。再生医療は、臨床試験(治験)でのノウハウの蓄積に加え、生産技術の確立を急ぐ段階に入っている。

 iPS細胞の再生医療をめぐっては、大日本住友製薬が、パーキンソン病患者の移植に適した細胞を効率的に見つける装置の開発に成功。従来の手法の10分の1以下となる1時間以内で、iPS細胞から作製された神経細胞を選び出せるという。

 このほか、目の病気の一種、加齢黄斑変性を治療する医薬品の開発をバイオベンチャー「ヘリオス」(東京都港区)とともに進めている。今年度中にも企業主導で治験を始めたい考えだ。

 別のバイオベンチャー「メガカリオン」(京都市下京区)は、京都大や東京大の研究をもとに血小板製剤を開発し、国内では2020年の承認を目指す。量産体制に関しては、他の製薬会社や医療機器メーカーなどとの協業で準備しており、三輪玄二郎社長は「輸血用の血小板製剤は国内だけでなく、血液製剤が不足しがちな海外からもすでに注目されている。ぜひ実用化したい」と語る。

 武田薬品工業は、京大iPS細胞研究所(CiRA)と共同で、筋委縮性側索硬化症(ALS)治療薬の研究などに取り組むほか、iPS細胞を病態解明に応用し、創薬に生かそうとしている。

 日本医療研究開発機構(AMED)の斎藤英彦プログラムディレクターは「新しい治療法なので、実用化の承認には厳しい条件もあるだろうが、研究機関だけでなくノウハウを持った企業との提携によって課題を克服することが期待できる。iPS細胞を使った創薬への応用にも期待したい」と話す。(安田奈緒美)