東証システム障害から1週間 責任所在で溝、対策限界も
日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所で株式売買などのシステム障害が発生してから16日で1週間。東証は過去のシステム障害のたびに対策を強化してきたが、再びもろさを露呈した格好となった。信頼回復に向けて東証は全容解明を急ぐが、対応には時間がかかりそうだ。
9日午前7時半すぎ、東証のシステム部門。異常を知らせる警告ランプが点灯し、監視中の担当者らに緊張が走った。「何が起きたのか」。注文には直接関係のない接続確認のための電子データが、通常の1000倍を超える量で送り付けられたことが後に判明した。
この結果、証券会社からの注文を受け付ける4回線のうち1本で接続ができなくなった。東証は残る正常な3回線に切り替えるよう各社に通知。顧客や証券会社に損失を与えかねず、迅速に対応したつもりだった。
午前9時の取引開始が目前に迫る中、焦ったのは証券会社だ。野村証券やSMBC日興証券といった大手をはじめ東証のシステムに接続する90社中40社弱は切り替えが間に合わず、注文の一時停止などに追い込まれた。
東証と証券会社のシステムは、平時からリスクに備えて複数の回線に接続しておく取り決めがあるが、「短時間での切り替えは困難」(大手証券)との声もあり、機能しなかった。
責任の所在をめぐり、証券界と東証の間にはすきま風も吹いている。東証は9日の記者会見で「証券会社との連携不足だった」と体制不備を認めたものの、各社への損害賠償については否定。ある証券幹部は顧客が被った損失の補償を迫られれば「東証などとの訴訟もあり得る」と語り、双方の溝の深さを印象づけた。
大量の電子データはメリルリンチ日本証券を経由して誤送信されたとみられている。ただ、コンピューターで短時間に株式売買を繰り返す「超高速取引」の海外機関投資家が発信元となり、東証システムへの接続ミスを繰り返したことが要因と指摘する声もある。ITの進展を背景に取引の手法は多様化しており、システム対策の限界が浮き彫りとなっている。
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