Zaifの仮想通貨流出が波紋 金融支援公表も…異例の3度目の業務改善命令
ハッキングにより約70億円の仮想通貨が流出したテックビューロ(大阪市西区)に対し、金融庁は異例の3度目の業務改善命令を出した。金融庁は立ち入り検査を継続しており、状況によってはさらに重い処分を出す可能性も出てきた。(東京商工リサーチ特別レポート)
テックビューロが運営する仮想通貨取引所「Zaif(ザイフ)」は9月14日、保有する仮想通貨が不正アクセスで約472億円の顧客の預かり資産のうち約45億円と、自社保有分の約25億円を合わせた計約70億円分の仮想通貨が流出した。
ザイフによると、不正アクセスで流出した仮想通貨はビットコイン(BTC)やモナコイン(MONA)、ビットコインキャッシュ(BCH)の3種類。このうち、顧客から預かっている仮想通貨は45億円という。
9月14日、17時頃から19時頃に外部から不正アクセスされ、ザイフのインターネットに接続されている入出金用システム「ホットウォレット」から流出。同月17日、サーバーの異常を検知し18日、ハッキング被害を確認した。
◆顧客への情報開示にも疑問符
ザイフは9月14日以降、「システム障害」で仮想通貨の一部の入出金などのサービスを停止。同社は9月17日、障害について「顧客資産の安全を確認した」とツイッターで公表したばかりだった。システム管理だけではなく顧客への情報開示でも問題になりそうだ。
9月18日、金融庁は同社に報告を求めたが、発生原因の究明や顧客への対応など報告内容が「すべての点で不十分だった」(金融庁)という。
このため金融庁は、流出事案の事実関係及び原因の究明ならびに再発防止策の策定・実行など業務改善命令を発出した。会見で金融庁は、仮想通貨の登録業者で不正な流出が発生したことについて「大変遺憾に思っている」と厳しい姿勢を示した。
テックビューロは今年の3月8日、適切に顧客対応するための態勢に関して業務改善命令を受けたが、6月22日にも利用者財産の分別管理等に係る実効性ある内部管理態勢について2度目の業務改善命令を受けていた。
◆フィスコグループが金融支援を表明したが
会見で金融庁は、「(ハッキングについて)具体的な説明を受けていない。9月27日までに顧客被害に対する対応などを書面で報告するように求めた」と説明。同時に立ち入り検査も実施し、検査の状況によっては「資金決済法の業務一部停止など把握した状況によって必要な対応を取る」とさらに重い処分を下す可能性も示唆した。
テックビューロは今回の事態を受け、9月下旬までにジャスダック上場のフィスコ(東京都港区)のグループ会社から50億円の金融支援を受け、ハッキングで消失した顧客の仮想通貨を調達する準備を進めていることを公表している。
また、セキュリティ向上の技術支援をジャスダック上場のカイカ(東京都目黒区)と契約したことも合わせて公表した。
だが、金融支援の動向や金融庁の追加処分の有無など、まだ重要な部分は流動的だ。同時に、仮想通貨取引所として顧客資産の保護や情報開示など、テックビューロの根本的な経営姿勢も問われている。
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