スマホ遠隔診療にAI威力 ベンチャー各社、健康データ集めサービス開発
医師と患者をスマートフォンでつなぐ遠隔診療が広がってきた。オンライン診療の健康保険適用を認めた今年4月の規制緩和が後押しとなり、ベンチャー各社の取り組みが加速している。健康データの蓄積が進み、人工知能(AI)を活用した医療サービスの開発に拍車が掛かりそうだ。
通院せず手軽に受診
「最近、頭痛や熱が頻発し、痛み止めを服用する量が多くて」。スマホの画面に向かって試しに相談してみる。テレビ電話に映った医師が「薬を変えると、胃や腎臓への負担も減りますよ」とアドバイスしてくれた。通院しなくても隙間時間に手軽に受診でき、医師との距離は通常の対面診療より逆に近いようにも感じられた。
記者が体験したのは東京の医療ベンチャー、MICIN(マイシン)が運営するオンライン診療アプリ「curon(クロン)」。継続的な診療が必要な糖尿病など生活習慣病対策を得意とし、約650の医療機関が現在採用している。7月には、自宅で計測した血圧や運動量、睡眠時間の情報を医師と共有できる機能を追加した。
データが集まれば、AIの分析力が威力を発揮する。最高経営責任者(CEO)の原聖吾医師は将来的に、患者が服薬をやめそうなタイミングや適切な食事の取り方をAIが医師に助言し、医師個人の能力差や経験不足を補って「患者ごとに最適な治療方針を提案できる」姿を思い描く。
医療とITの融合は中国で先行する。約1000人の医師を擁する医療企業「平安好医生」は外部の病院とも提携し、ウェブ上で1日37万件の診療をこなす。累計3億件の症例データを集め、AIが画像診断などを側面支援することにより、従来の病院では考えられない大量診療を可能にした。
医師不足などに対応
7月に東京都内で講演したオリバー・ワン会長は「医師不足や病院での長い待ち時間など、中国が抱える問題を解消できる」と述べ「全ての家族にかかりつけ医を付けたい」と目標を語った。
日本のオンライン診療アプリはcuronのほか、MRT(東京)の「ポケットドクター」、メドレー(同)の「クリニクス」がしのぎを削る。今後「アプリを基盤に健康データの活用に軸足が移っていく」(業界関係者)見通しで、中国と類似の医療サービスに発展する可能性がある。
野村総合研究所の横内瑛氏は、医療の質が上がることに期待を寄せつつ「データにない希少疾患が見落とされる懸念もある」と問題点を指摘した。
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