片岡剛士審議委員が日銀政策修正に反論 「むしろ追加緩和を」

 

 日本銀行の片岡剛(ごう)士(し)審議委員は6日、横浜市内で記者会見し、大規模金融緩和の副作用を抑制するため金利上昇を一部容認した7月の政策修正について「むしろ追加緩和が必要だ」と反論した。物価が伸び悩む中、来年以降は経済成長が鈍化する可能性があるため、長期金利の一層の引き下げで物価上昇を後押しすべきだという考え。金融政策の方針に対する日銀内の温度差が改めて浮き彫りになった。

 片岡氏は7月の政策修正で反対票を投じた。この日行った講演や記者会見では「物価の基調的な上昇力が弱まっている」と分析し、現行政策では2%の物価上昇目標を実現できる見込みは低いとした。

 また、7月の政策修正で長期金利の変動を一定程度認めたことで、これまで続けてきた0%程度への誘導が「有名無実化する」と指摘。物価が伸び悩む中で金利が上昇すれば2%達成が後ずれしかねないとした。

 片岡氏が追加緩和を求めるのは世界経済の不確実性が背景にある。米中貿易摩擦の激化や米国の利上げによる新興国からの資金流出で、来年以降は景気拡大にブレーキがかかる恐れがある。特に日本は消費税増税の影響も受けるため、実質国内総生産(GDP)成長率は平成31年度に0%台後半に減速すると予想する。

 そうなれば伸び悩む物価に下押し圧力が加わるのは避けられない。今のうちに「10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げる」ことで企業の設備投資や賃上げを促し、デフレ脱却を確実にしたいという考えだ。

 とはいえ、追加緩和すれば副作用は一段と強まる。金融業界では今回の政策修正は利ざや(貸出金利と預金金利の差)拡大に効果が薄いと不満があり、早くも修正第2弾に期待する声が上がっている。

 短期間で2%目標を実現するのは事実上困難な上、今回のような微修正を繰り返し大規模緩和を長期化しても最終的に目標を実現できる保証もない。円高を招く金融緩和の撤退(出口戦略)も、金融業界の反発を受ける積極的な追加緩和も選べず時間が経過すれば、いずれ景気後退でなし崩し的な追加緩和を迫られるシナリオが現実味を帯びる。

(田辺裕晶)