ブロックチェーン、公文書管理などで活用期待 瞬時に改竄検知、安全を担保

 
大分県竹田市とインフォテリアによるブロックチェーンを使った公文書管理の実証実験=7月25日、竹田市役所

 「改竄(かいざん)された可能性があります」。パソコンの画面に並んだ文書のアイコンとQRコード。タブレット端末でQRコードを読み取ると、瞬時に赤い警告の文字が出た。

 大分県の山あいにある竹田市は、IT企業のインフォテリア(東京)と共同で、8月3日まで公文書管理にブロックチェーン(BC)を活用する実証実験を行った。暗号技術を使って、文書をBCに登録。同時に発行されるQRコードで改竄の有無を簡単に確認できる。

 過疎の町こそ電子化

 省庁による文書改竄や企業のデータ不正が相次ぐ中、改竄が困難なBC技術への期待が高まっている。

 過疎に悩む竹田市が目指すのは行政の効率化だ。ペーパーレス化を模索する中で、電子文書の正当性を証明するためにBCを使うアイデアが出たという。

 担当した情報化推進室の山村明さんは「生き残りのためにも過疎の町こそ電子化を進めないといけない。改竄が難しいといったBCの性格は、まさに行政サービスに向いている」と強調した。今後、自治体業務全般での可能性を探っていく。

 食品の生産・流通履歴を確認できる「トレーサビリティー」も期待が大きい分野だ。

 野生鳥獣肉(ジビエ)の普及を目指す日本ジビエ振興協会(長野県茅野市)は、シカやイノシシの肉のトレーサビリティーシステムを構築した。今秋に運用を始める。

 捕獲者や解体業者、適切な処理がされたかといった情報が、BCに記録され、レストランや消費者側で確認できるようになる。鳥獣による農作物被害が深刻化する中、ジビエの一層の消費拡大が求められている。協会の石毛俊治常務理事は「安全性を担保し、外食チェーンへの納入を目指したい」と意欲を示した。

 宮崎県綾町は、電通国際情報サービス(東京)と連携し、有機野菜の品質証明に活用しようとしている。

 農薬や化学肥料を極力使わない「自然生態系に配慮した農業」に取り組む町が、有機野菜の詳細な生産・流通履歴をBCに記録し、東京の環境意識の高い消費者に届ける実証実験をこれまでに2回実施した。

 ニンジンやジャガイモを出荷した農家の北野将秀さんは「安全安心を保証できる技術として可能性を強く感じる」と声を弾ませた。

 消費拡大や観光振興

 茨城県かすみがうら市は6月からBCのシステムによる「地域ポイント」事業を始めた。スマートフォンに専用アプリをダウンロードしてもらい、地域のイベントに参加した市民や観光客に、1人数百円分といった形でポイントを配る。ポイントは市内飲食店などで利用でき、域内消費拡大や観光振興につなげる。

 担当者は「BCの信頼性の高さが一番のメリット。対外的にポイントの改竄はまずないと説明できたのが良かった」。

 札幌市のIT企業、インディテールは、北海道をBCの先進地域にしようと「ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム」という団体を作った。現在、自治体や金融機関、事業会社など約40組織が参加し、月例会やセミナー開催などで活発に活動している。

 日本全体で著しく不足している技術者の育成にも取り組む。坪井大輔社長は「付加価値の高い産業にして、東京から地方へのお金の流れを作りたい。BCに取り組む他地域とも連携していきたい」と語った。

【用語解説】ブロックチェーン

 仮想通貨の基盤技術で電子的に情報を記録する新しい仕組み。取引履歴といったデータを、特定のコンピューターが一元的に記録するのではなく、ネットワーク上にある複数の参加者のコンピューターで分散して管理する。次々に発生するデータをひとまとめに記録した「ブロック」を、鎖(チェーン)のようにつないでいくのが特徴だ。メリットとして(1)障害に強い(2)改竄が困難(3)管理者や仲介者が不要なため低コスト-といった点が指摘されている。