【eco最前線を聞く】国産材使い社会的・経済的課題を解決

 
エコッツェリア協会が運営する3×3LabFuture。乃村工藝社がデザイン・設計から関わり、20種類以上の木材などを活用し環境配慮の空間づくりを行った=東京・大手町

 □乃村工藝社プランニング統括部プランナー・梅田晶子さん

 2010年に国産材・地域産材などの活用を応援する「フェアウッド応援宣言」を策定した乃村工藝社は、昨年5月のクリーンウッド法施行を機に応援活動に一段と力を注いでいる。自社だけでなく、業界全体を巻き込んだ持続的活動が必要と判断した。「木をめぐる多様なつながり」についてのストーリーを収集し、啓発活動に取り組むプランニング統括部の梅田晶子プランナーに国産材使用のメリットなどを聞いた。

 --フェアウッド応援宣言を策定した理由は

 「事業活動を通して木材・同製品を多く使用しており、出所がはっきりしているフェアウッドの調達が環境に対する社会的責任と考えたからだ。そのため国産材・地域産材、信頼のある認証を受けた木材、リサイクル材・リユース材を積極的に使っている。また業界のリーディングカンパニーとして内装やディスプレー業界などに情報発信していくとともに、使い手(消費者)には空間にフェアウッドを取り込むことで社会課題を解決できることを訴えていく」

 --課題解決とは

 「日本は国土の7割が森で、その4割が人工林。既に植林から50~60年たち一斉に伐採期を迎えている。しかし国産材需要が低下し、森の手入れも行き届かなくなっている。国産材を使うようになれば、林業従事者の仕事が生まれ、森を管理できる。国産材を使うことは、森を壊すのではなく、育てることにつながるわけだ。また木は酸素を作り、水源を養成し、食べ物になる。材料や燃料にもなる。養分になって次の世代や他の生物を生かす。産地木材を使えばお金を生み出すので、地場産業・地域経済を活性化し新たな雇用を促す」

 --こうした経済的価値、社会的価値を訴えている

 「国産材を使うと、人と人、自然と人、地域と都市など木をめぐる多様なつながりが生まれる。木をめぐるストーリーを伝えていくことで、フェアウッドを使うメリットに気づいてもらいたい。利用者にとって、木は五感を刺激するので香りや肌触りがリラックス効果、癒やし効果をもたらすほか、国産材を使うことが地域を育てている、社会に貢献しているという誇りを生み、モチベーションアップにつながる」

 --どんな啓発活動に取り組んでいるのか

 「社内的には、プランナーからデザイナー、営業、制作の全職種を対象に国産材活用の説明会を開催。本社や大阪事業所などで約200人に実施したが、今後は5支店・約100人に対して行う。協力会社にも理解促進のための勉強会『ノムラ協力会 事業者セミナー』を9月後半から10月前半にかけて全国7会場で実施する。全部で600~700人が参加する予定だ」

 --冊子も発行する

 「木とクリエーターをつなぐ活動として『ウッドソリューション・ネットワーク』(事務局・農林中金)が10月から、フェアウッドを使って豊かな空間デザインの提案をデザイナーに促す冊子『木質空間デザイン・アプローチブック』を配布する。この業務を受託し、プランナーとして企画に関わった。『木が生まれて空間になるまで、体感ツアー』の実施を企画中だ」

 --最終的に目指すのは

 「業界のリーディングカンパニーとして、当社の木材利用を将来的には100%フェアウッドにしたい。また全47都道府県を産地とする木材活用のサプライチェーンを構築していくほか、内装下地材として活用できる国産木材で合板・集成材を調達していく考えだ」(松岡健夫)

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【プロフィル】梅田晶子

 うめだ・あきこ 東京学芸大卒。1988年乃村工藝社入社。ものづくり関連の展示や環境、CSV関連の企画開発などに携わり、2017年からフェアウッドプロジェクト担当。18年3月事業統括本部プランニング統括部企画3部第8ルームプランナー。東京都出身。