大塚家具が“呪縛”解いた? 金融機関から20年ぶり資金調達…提携交渉に影響か
3期連続の中間赤字を発表した大塚家具(東京都江東区、大塚久美子社長)が今年6月、約20年ぶりに金融機関から資金調達していたことがわかった。(東京商工リサーチ特別レポート)
大塚家具が東京商工リサーチ(TSR)の取材に明らかにした。
借入額は数億円とみられる。7月には返済しており、現在は無借金に戻っている。
◆提携交渉、長期化の可能性
大塚家具は1999年上期以降、無借金経営を続けていた。今回の資金調達は、手元資金の減少と再建に向けた資金に厚みを持たすことなどが目的とみられる。
大塚社長は金融機関からの資金調達について、「必要なら借りるし、必要でなければ借りない」とこれまで言明していた。だが、赤字から抜け出せず現預金が減少し、手元資金も乏しくなっていた。銀行からの資金調達が実行されず、「借入できない理由があるのではないか」と一部で憶測を呼んでいた。
大塚家具は、複数の銀行から50億円のコミットメントライン契約を締結している。契約は、「今でも有効」(大塚家具の担当者)という。抜本的な改革に向けて今後も弾力的に借入枠を活用するとみられる。
無借金経営から転換したことで、独自での資金計画が立てやすくなった。貸し会議室大手のティーケイピー(東京都新宿区)など、他社との提携交渉も急ぐ必要はなく、長期化する可能性が出てきた。
◆キャッシュアウトに歯止めかからず
大塚家具の現預金は、業績悪化で2015年12月末の約110億円が2018年3月末には約10億円まで減少していた。
一方で、銀行から資金を調達したことでキャッシュアウトに歯止めがかかっていないことが露呈したともいえる。
だが、「無借金」による不安定な資金繰りより、安定化のため一定の資金調達を望む取引先も多かったのも事実だ。また、手元資金が不十分な状況で、再建計画の策定を疑問視する声もあがっていた。
8月7日のリリースで、年間配当も1株10円から未定に修正した。赤字でも多額の配当を続けた大塚家具だが、配当方針も現実路線に変更したようだ。
ブランドに固執し、無借金や高配当という呪縛が解けなかった大塚家具。窮余の一策なのか、ここにきて変化の兆しもみえてきた。次は、大塚社長の新たな再建策が現実路線を選ぶのか注目される。
■大塚家具、「継続企業に疑義」 3年連続中間赤字、提携策へ を読む
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