【木下隆之のクルマ三昧】スバルの「顔認識」で膨らむ期待 鍵のストレスから解放される日
スバルは新型フォレスターで画期的なシステムを採用した。ドライバーの顔をモニタリングする「顔認識技術」を投入したのだ。
ダッシュボード中央に埋め込まれたカメラがドライバーの顔を捕捉、顔認証を行う。輪郭や目の位置や大きさなどをモニタリングすることで個人を特定、ドライバーズシートの位置やドアミラーの角度など、記憶したポジョンに自動でアジャストしてくれるのである。
いわば、iphone等の顔認証技術の応用である。SNSでタグ付けされる場合、こんなピントがボケた顔をも認識してくれるのかと驚くことがあるけれど、その応用だから精度は期待できそうである。
◆さっそく試してみると…
家族で一台の車を使う家族ではありがたい機能だろう。これまでも、ドライビングポジョンなどを記憶させるメモリー機能は少なくないが、わずかとはいえいちいちメモリー番号を押す手間も省ける。
実際に体験した印象からすれば、精度は驚くほど高かった。着座した瞬間にモニタリングが開始される。ものの数秒で「木下隆之」個人を特定、すかさず、事前に設定した僕の理想のドライビングポジションにアジャストしてくれたのである。
ちょっと意地悪に、顔を歪めてやってみたけれど、よほど極端なことをしなければ認識率は高いと思えた(そんなことをする意味はないけれど…)。
ちなみに、フォレスターの顔認証技術は、安全運転にも応用される。目の位置や角度をモニタリングしているから、まぶたが下がったことで居眠りと判断するし、顔の向きが極端に変わればわき見運転だとなる。
◆ドアの開閉やエンジン始動はどうか?
さて、そんな体験をして改めて思うのは、この技術をもっと拡大して、ドアの開閉やエンジン始動などに応用できないものかと期待してしまう。
カメラで顔認証や虹彩や、あるいは指紋認証など、様々なバイオメトリクス認証技術を応用することで、ユーザーの利便性が高まるばかりか、盗難防止や安全運転へ応用できるのではないかと考えたのだ。
たとえばスマホなどで一般的なのは指紋認証である。ドアノブの一部にもタッチパネル風なセンサーをつけておけば難しくはない。
窃盗団がドア開閉を試み、よしんばそれは成功したとしても、スターターボダンに指紋認証機能を加えておけばエンジンはうんともすんとも反応しないはずだ。スターターボタンはどうせ指で押すのだから、我々にとっても親しみやすいだろう。
◆さまざまな認証を組み合わせれば利便性も高まる
顔認証は、写真をかざしただけでも誤認識してしまうという脆弱性がある。ならば、加速度センサーとカメラを組み合わせた3D認証は都合がいい。カメラに向かって顔を動かせば立体的な顔を認識するからである。
いや、たとえ2D顔認証であっても指紋認証や虹彩認証などを複雑に絡ませれば、盗難防止をしながら利便性を高められると思うのは素人的なのだろうか。
そもそもクルマの鍵にまつわる苦労話を持たない人などいないはず。
「鍵を忘れた」
「鍵をなくした」
「交番に行って紛失届を出した」
「バッグの中で散乱して探すのが厄介だ」
「カードキーは薄くてなくしやすい」
「カードキーのバッテリーがなくなった」
◆バイオメトリクス認証をポピュラーに
クルマの歴史は、鍵を持つストレスと付き合ってきた歴史なのかもしれない。
だったらそろそろ、我々を鍵を持つストレスから解放してくれてもいいのかと思う。
バイオメトリクス認証は、まだ技術的な過渡期であり将来性が高い。よって近い将来必ず認証技術をそなえたクルマが登場するのだろう。ならば、一刻も早くバイオメトリクス認証をポピュラーにしてほしい。
バイオメトリクス認証技術は様々であり、顔認証、虹彩認証、指紋認証に加え、筆跡認証や、たとえば人の声を認識する「声紋認証」なども含まれる。だからといって、クルマの前で歌わされることがないように願いたいけど…。
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【木下隆之のクルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。
【プロフィル】木下隆之(きのした・たかゆき)
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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