自動車大手、ベンチャー企業と連携加速 AIなどオープンイノベーション、ファンドも活発
自動車大手がベンチャー企業との連携を加速している。自動運転で人の代わりに認知や判断を行う人工知能(AI)など、各社がこれまで培った技術の延長線上にはない新分野の強化が課題となっているからだ。かつては自動車メーカー同士の協業が多かったが、社内外の経営資源を融合して技術やビジネスを革新する「オープンイノベーション」の実現を視野に、ベンチャーとの連携が活発化。有望なベンチャーに出資するファンドの創設も相次いでいる。
SUBARU(スバル)は今月、ネット証券大手、SBIホールディングス子会社の投資会社と共同で、ベンチャーを投資対象とするファンドを設立した。規模は100億円で、運用期間は5年間。
中村知美社長は「オープンイノベーションの取り組みをスタートさせる。将来、スバルブランドの価値を飛躍させる可能性がある新しい技術やビジネスのシーズ(種)に投資していく」と説明した。
トヨタ自動車も2015年、投資会社のスパークス・グループ、三井住友銀行と「未来創生ファンド」を設立。自動運転技術の開発を進めるティアフォー(名古屋市)などに出資した。
トヨタは自動運転技術の進化を視野に入れた協業を活発化。AI分野では今年5月、ビッグデータ分析のアルベルト(東京)に4億円を出資した。トヨタ第2自動運転技術開発室の平野洋之室長は「自社のリソースだけではデータの分析を行えないという危機感があった」と説明する。
電動化・知能化の対応 自前では限界
協業を視野に入れた自動車大手とベンチャーの交流も盛んだ。ホンダは研究開発子会社、本田技術研究所(埼玉県和光市)を通して、ベンチャー企業に資金援助や協業の機会を提供するプログラム「ホンダ・エクセラレーター」を米シリコンバレーなどで推進している。
また、日産自動車と産業革新機構は6月中旬、革新機構が出資するベンチャー企業7社が出展する技術内覧会を横浜工場で開催。測定器の開発・販売を手掛ける東工大発ベンチャーの光コム(東京)は、レーザーを駆使して複雑な形状のエンジン部品の隅々まで高精度に検査できる装置を持ち込み、日産の技術者らにアピールした。
日産の早川敦彦常務執行役員は「車の電動化・知能化への対応は、自前の技術だけでは限界がある。ベンチャー企業や大学と連携する動きを加速したい」と話している。
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■主な自動車大手とベンチャー企業の連携(ベンチャー企業/連携の内容)
トヨタ アルベルト(日本)/ビッグデータ分析
エイチーム(日本)/中古車のネット販売
ホンダ ドライブモード(米国)/運転用スマホアプリ
ボーカルズーム(イスラエル)/音声認識技術
日産 アイオニック・マテリアルズ(米国)/EV向け電池の素材開発
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