富士フイルム、米ゼロックスを損賠提訴 見えぬ解決の糸口、計画白紙も

 

 富士フイルムHDによる米ゼロックスの買収をめぐる混乱は訴訟にまで発展、泥沼化した。富士フイルムHDは、損害賠償請求をてこにゼロックスに契約履行を迫るが、ゼロックスは「(合意破棄は)契約上の権利を正しく行使した」と反論、徹底抗戦の構えを崩さない。対立が先鋭化する中、解決の“糸口”は見えず、計画の白紙撤回も現実味を帯びてきた。

 「(今回の買収計画が)両社の株主にとって短期的にも長期的にも多大な利益をもたらすための唯一の正しい道だ」

 富士フイルムHDは声明で、引き続き買収を目指す考えを強調した。買収が実現すれば、事務機器の売上高を年3000億円規模増やせると富士フイルムHDは試算しており、両社の株主に大きな利益をもたらすというのが言い分だ。

 これに対し、ゼロックスは、富士フイルムHDによる提訴後の声明で、合意破棄は富士フイルムHD傘下の富士ゼロックスで起きた不正会計問題が未解決なことが理由だと主張。「取締役会は契約上の正当な権利を行使したという絶対の自信がある」と反論し、徹底的に争う姿勢を強調した。

 富士フイルムHDは、損害賠償という形でゼロックスに「あいくち」を突き付けたが、それでもゼロックスの態度は一向に変わらない。というのも、買収計画を推進してきたゼロックスの最高経営責任者(CEO)が5月に退任、買収反対派のゼロックス大株主の米著名投資家、カール・アイカーン氏らが送り込んだ新経営陣が運営を担うからだ。

 富士フイルムHDの古森重隆会長はこのまま膠着状態が半年間続けば撤退も選択肢と示唆しており、そうなれば戦略の抜本的な見直しも不可避だ。(今井裕治)