ゼネコン各社でロボット、AI活用広がる 省人化を加速
ゼネコン各社が自律型ロボットや人工知能(AI)の活用による省人化の技術開発を加速させている。高齢化による離職など建設技能労働者の人手不足が深刻化する中、先進技術の導入で作業の効率化を進め、人への負担を軽減しながら生産性を維持する狙いだ。
清水建設の技術研究所(東京都江東区)のロボット実験棟では、2本のアームを持つ自律型ロボット「ROBO-BUDDY」(ロボ-バディ)の開発が進められている。
鉄骨造の建物内部を模した区画に設置されたロボットは、仕事開始の指令を出すと、アームの1本が脇に置かれたパネルを天井へと水平に持ち上げ、もう1本のアームが天井部分の金属の骨組みを狙ってビスを打ち込む。「従来は職人1人が頭でボードを支えながらビスを打つ。何枚もやると首が痛くなる作業だ」と生産技術本部長の印藤正裕氏は指摘する。
同社は2016年に人と協働できる自律型ロボットの開発に着手。これまでに10億円超を投じ、自分で溶接場所を見つけて作業する溶接ロボットなど計3種の基本開発を終えた。現場での検証後、19年下半期以降に全社展開する方針だ。
また、大成建設は昨秋、千葉工業大と共同で、交差する鉄筋を針金などで留める自律型の鉄筋結束作業ロボットを開発。この作業は鉄筋工事の約2割を占める単純作業だが、従事者の肉体的負担は大きい。ロボット化できれば、より難しい工程に人手を回し、生産性を改善できる見込みだ。
一方、鹿島はコンクリート型枠の全自動化システムで既に成果を挙げている。昨秋、このシステムを新桂沢ダム(北海道三笠市)堤体工事に導入。幅15メートルの大型コンクリート型枠の移動や脱型など一連の作業を、作業員1人がタブレット端末で操作する。従来は5人で約280分かかった作業が、新システムでは約180分で済んだという。
国土交通省によると、建設技能者数は、ピークだった1997年の約455万人から17年は約331万人に減少。逆に55歳以上の割合は34.1%と全産業平均の29.7%を上回り、高齢化が進んでいる。今後の大量退職による労働力不足への対応は業界共通の課題で、対策の巧拙が競争力を左右する。
ロボット活用の動きが広がる中、大林組はAI導入にも着手した。コンクリート表面のひび割れの状況確認に、高性能カメラと富士フイルムのAI技術を応用。最大50メートル遠方から撮影した画像でも0.1ミリ幅のひび割れを自動検出するシステムを開発。これまでの目視点検よりも精度は高いという。(日野稚子)
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