東芝メモリの売却が確定 中国当局の独禁審査通過
経営再建中の東芝は17日、半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続きに必要な各国の独占禁止当局の承認を全て取得したと発表した。最後に残っていた中国の独占禁止当局の審査が17日に承認され、米投資ファンド「ベインキャピタル」を軸とした「日米韓連合」へ総額2兆円で売却することが確定した。東芝は喫緊の課題だった東芝メモリ売却で得る資金を使い、再成長への投資を加速する。
17日に中国当局からベインキャピタルに対し承認するとの通知があり、これで東芝メモリ売却の前提条件が満たされた。日米韓連合は今後、資金の払い込みを行い、6月1日に売却は完了する見通し。東芝は売却後も東芝メモリの40%程度の株式保有を継続する。
東芝は、平成29年9月、東芝メモリを日米韓連合に総額2兆円で売却する契約を結んだ。しかし、中国当局が昨年12月に始めた審査が長引き、審査の最終期限が今月28日に迫っていた。
東芝メモリは東芝の営業利益の大半を生み出す稼ぎ頭。ただメモリー事業は需要の変動が激しいうえ定期的な多額の投資も必要で、経営危機から脱したばかりで十分な余力がない東芝には負担が大きく、売却できるかが焦点になっていた。
東芝は、31年3月期に東芝メモリの売却益として9700億円を見込む。東芝メモリの売却益は重点分野への投資に充て、半導体に代わる稼ぎ頭の育成に取り組む。ただ、東芝はここ数年、経営危機を脱するために医療機器やスマートメーターなどの成長事業を相次ぎ売却し、牽引(けんいん)役は不在の状態。東芝の車谷暢昭代表執行役会長兼最高経営責任者(CEO)は15日の決算会見で、収益力強化に向け年内に5年間の中期経営計画を策定し成長軌道への回帰を目指すとしたが、具体策はまだ見えていない。
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【用語解説】東芝の経営再建問題
東芝は平成28年12月、米原子力事業での巨額債務が判明したと発表。資本増強の必要からメモリー事業の売却を決めた。29年6月、売却の優先交渉先として米投資ファンドのベインキャピタルなどで構成する「日米韓連合」を決めたが、メモリー事業で東芝と協業する米ウエスタンデジタルが売却に反対し、契約締結が9月にずれ込んだ。その後の増資などで東芝は債務超過を解消、一部では売却不要論も出ていた。東芝は売却でメモリー事業への設備投資負担を軽くし、40%程度の株式保有を続ける。
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