東芝、屋台骨支える成長事業急務 真価試される車谷氏、メモリ売却後の成長の姿描けるか
東芝が最大の懸案だった債務超過を2018年3月期に解消し、再生に向けた一歩を踏み出した。年内には5年間の改革計画を策定し、成長軌道への回帰を目指す。だが、稼ぎ頭の半導体子会社「東芝メモリ」売却後の成長の姿を描き切れていないのが実情だ。中国の独占禁止法の審査で遅れている東芝メモリを確実に売却し、そこで得られる資金も活用して新たな収益事業を育成できるかが、名門復活の鍵を握る。
「これでようやくスタートラインに立てた」
東芝の車谷暢昭会長兼CEOは15日の決算記者会見で、不正会計問題に端を発した危機的な財務状況を脱し、これから本格的な再建に着手できるとの認識を示した。
東芝が再建を確実に進めるための前提となるのが東芝メモリの売却だ。東芝は東芝メモリの売却に伴い、19年3月期業績に売却益9700億円の計上を織り込み、策定中の5年間の改革計画でもこれを前提とした。
目下、東芝メモリを売却できるかは、今月28日に最終期限を迎える中国の審査結果次第だが、車谷氏は「審査結果を待つ状況に変わりはない」と述べた。仮に中国から承認されない場合は、申請を取り下げ、再提出も検討して、売却にこぎつけたい考えだが、時間がかかれば、再建計画の修正にもつながりかねない。
東芝メモリを売却できても、それに代わる新たな収益源を育てられるかも課題となる。
東芝の連結売上高は事業の売却を繰り返したことで4兆円を下回り、ピークの08年3月期(7兆2088億円)から4割強も縮んだ。再成長には売上高の回復も欠かせないが、かつて半導体と双璧をなす主力だった原発事業は、福島第1原発の事故後、国内の新増設が止まり、海外での需要増も見込みにくい。水処理やエレベーターなどインフラは安定需要こそ見込めるが、半導体メモリー事業の抜けた穴を補うほどの成長は難しい。
東芝が15日に示した改革方針でも、屋台骨を支える次の成長事業については具体的な言及がなく、固定費の圧縮など、コスト削減施策に重点が置かれた。
「収益性を強化し、成長事業を育成する。18年度を変革元年にする」と会見で再成長に向けた決意をこう語った車谷氏。年内に数値目標も含めて発表する改革計画で、説得力のある成長戦略を示せるか。金融再編などに手腕を発揮し、旧三井銀行でプリンスと呼ばれた車谷氏の真価が試される。(今井裕治)
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■東芝の主要事業別収益(2018年3月期、連結ベース)(売上高/営業損益)
エネルギー関連(火力発電、原子力発電など)
8447(▲13.4)/▲148(-)
インフラ関連(水処理システムなど)
1兆2468(▲1.2)/480(▲17.8)
企業向け関連(レジ、事務機器など)
5228(3.0)/270(65.6)
半導体関連(HDD、電子デバイスなど)
8796(5.1)/473(▲17.9)
システム関連(クラウド、AIなど)
2589(8.1)/13(▲81.7)
※単位:億円、カッコ内は前期比増減率%。▲はマイナスまたは赤字。-は比較できず
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