東芝・車谷会長「ようやくスタートライン」 半導体売却に遅れ 新たな収益源見えず

 
会見する車谷暢昭会長=15日午後、東京都港区(三尾郁恵撮影)

 東芝が最大の懸案だった債務超過を平成30年3月期に解消し、再生に向けた一歩を踏み出した。年内には5年間の改革計画を策定して成長軌道への回帰を目指すが、稼ぎ頭の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」売却後の成長の青写真は描けていない。中国の独占禁止法審査で遅れている東芝メモリ売却を確実にし、得られる資金を活用して新たな収益事業を育成できるかが、名門復活の鍵を握る。

 「これでようやくスタートラインに立てた」

 東芝の車谷暢昭会長は15日の記者会見で、不正会計問題に端を発した危機的な財務状況を脱し、今後、本格的な再建に着手できるとの認識を示した。

 東芝が再建を確実に進めるために、前提となるのが東芝メモリの売却だ。売却できるかどうかは28日に最終期限を迎える中国の審査結果次第だが、車谷氏は「審査結果を待つ状況に変わりはない」とし、売却方針の維持を強調した。

 31年3月期決算見通しには売却益9700億円を織り込み、策定中の5年間の改革計画でも売却を前提とする。審査を通過しなければ申請をいったん取り下げて再提出検討も辞さない考えだが、時間がかかれば再建計画の修正にもつながりかねない。

 東芝メモリを売却できても、それに代わる新たな収益源を育てられるかどうかが次の課題だ。東芝の連結売上高は事業の売却を繰り返したことで4兆円を下回り、ピークの20年3月期(7兆2088億円)から4割強も減少している。

 再成長には売上高の回復が欠かせないが、かつて半導体と双璧をなす主力だった原発事業は、東京電力福島第1原発事故後、国内の新増設が滞り、海外での需要増も見込みにくい。水処理やエレベーターなどインフラは安定需要こそ見込めるが、半導体の減少を補うほどの成長は難しい。

 東芝が15日に示した改革方針でも、屋台骨を支える次の成長事業については具体的な言及がなく、固定費の圧縮など、コスト削減施策に重点が置かれた。

 「収益性を強化し、成長事業を育成する。30年度を変革元年にする」と記者会見で再成長に向けた決意を語った車谷氏。年内に数値目標も含めて発表する改革計画で、説得力のある成長戦略を示せるか。金融再編に手腕を発揮し、旧三井銀行でプリンスと呼ばれた車谷氏の真価が試される。(今井裕治)