男性育休、ベンチャー企業に広がる トップが率先して取得、組織の活性化に一役
ベンチャー企業の間でも、男性従業員が育児休暇を取得する動きが広がっている。創業初期から成長期に至るまでは、従業員も少なく残業や休日出勤は当たり前で、取得をためらう男性は少なくなかったが、夫婦の在り方や働き方に対する意識の変化が、育休に向かわせている。
ワークシェア導入
求人広告代理店のプレシャスパートナーズ(東京都新宿区)代理店営業部の善方隆寛課長は、今月20日から約1カ月間の育児休暇を取得している。2008年の会社設立以来、男性従業員が取得するのは初めてだ。「妻の両親も仕事をしている上、2歳になる長女の保育園の送り迎えもあり、思い切って社長に相談したら、育休を勧められた」という。
課題となる育休中の仕事は、数年前に初めて女性社員が育休を取得した際に適用したワークシェアリングを導入、最低でも2人で1つの業務に当たるようにした。得意先も好意的な反応で、高崎誠司社長は「仕事でも育児でも必要以上に負担をかけるのは、会社にとって幸せなことではない」と話す。
ビズリーチ(同渋谷区)でも、CRS事業部総合企画部の豊田直紀マネージャーが昨年8月から今年6月まで育児休暇を取得。妻の留学に帯同するかたちで、ロンドンに滞在している。生まれてきた長女を見て、「子育てでは父親も母親も対等な関係。自分にとって大切なのは家族と一緒に過ごす時間だ」と長期の育休取得を決意した。
トップ自らが育児休暇を取得するケースも出てきた。フィンテックベンチャーのfreee(フリー、同品川区)の佐々木大輔社長は16年、第1子誕生を機に1週間の育休を取得した。フリーマーケットアプリのメルカリ(同港区)の小泉文明社長も昨秋の第2子誕生を機に2カ月間の育休を取った。
かつては「男は仕事、女は育児」が当たり前だったが、共働きの夫婦が当たり前となった現在、家事も育児も夫婦で分担するのが一般的だ。手が足りないときにはベビーシッターを頼む方法もあるが、経済的な負担がネックとなる。その結果、「第1子誕生時に妻が育児で大変だったので、第2子のときは私が育休」というケースも少なくない。
現場に権限委譲推進
トップ自ら育休を取ることで、働き方への意識改革を促す側面もある。freeeでは他の男性役員や従業員でも育休を取る人が相次いだ。メルカリでも管理職が育休を取得しても業務が回るように、「マネジャークラスが意思決定できるよう、現場への権限委譲を進めたこと」(広報)で、組織全体の活性化が図れたという。
厚生労働省によると、16年度の時点で男性の育休取得率は3.16%。前年度比0.51ポイント増で比較可能な1996年度の調査以降、過去最高となった。とはいえ女性の81.8%と比べると見劣りするのは否めない。男性にとって育休の取得は心理的なハードルも高く、プレシャスパートナーズの善方課長も「相談するのに2週間悩んだ」と打ち明ける。
だが社歴の浅いベンチャー企業だからこそ、トップの意識一つで育休が取りやすくなるのも事実。家族的な社風のベンチャー企業も多く、男性従業員の育休取得は確実に増えるとみられ、大手を含めた民間企業全体の先導事例となりそうだ。
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