淋しい? 消えゆく出入国スタンプ パスポート審査短縮、自動化ゲート設置進む

 
羽田空港に導入された顔認証で本人確認する自動化ゲート=2017年10月

 国際線で出入国審査の際、旅券(パスポート)に押す証印(スタンプ)を省略する対応が、各国の空港で目立っている。最新技術で本人確認する自動化ゲートの導入などと併せて、審査時間を短縮するのが狙い。日本でもゲート利用者の証印は省略が一般的だ。旅行者はスムーズな出入国を歓迎する一方で「旅の記念がなくなるのは寂しい」との声も聞かれる。

 混雑緩和の課題

 「パスポート、プリーズ」。記者が1月に出張で訪れた韓国の仁川国際空港。出入国時に提示を求められた旅券に、証印は押されなかった。

 世界的に航空旅客が増える中、空港の出入国審査の混雑緩和は共通の課題だ。「先進国を中心に、審査時間短縮のため証印を省略する傾向がある」と、日本の空港関係者は説明する。

 法務省入国管理局によると、証印には出入国許可を証明する役割があり、日本の対面審査では出国時と入国時に押印。訪日外国人の入国時は、証印として滞在期限を明記したシールを貼る。

 各政府などによると、香港は2013年から証印廃止を進め、到着日や滞在期限が確認できるメモ用紙を代わりに交付している。オーストラリアでは、顔認証で本人確認をする「スマートゲート」を主要空港に設置し、利用者には押印しない。日本の旅券所持者は、入国時は16歳以上で利用可能だ。

 2カ月に1度は海外出張するという東京都中央区の会社員、川北晃央さん(35)は「入国審査で並ぶことも想定して仕事のスケジュールを組んでいる。もちろん時間が短くなるのに越したことはない」と歓迎する。

 日本では07年、日本人と国内の在留資格を持つ外国人を対象に、指紋による自動化ゲートの運用を開始。昨年10月に顔認証のゲートも導入され、来年3月末までに成田、羽田、中部、関西、福岡の各空港に計約140台を設置予定だ。将来的には訪日外国人への対応も視野に入れている。

 旅の実感なくなる

 出入国の日付や空港名などが入る証印に思い入れを持つ旅行者は多い。デザインは国ごとに異なり、飛行機や星のイラストが描かれるなど多種多様だ。日本では自動化ゲートの利用時も、入国管理局の事務所に申し出れば証印を押してもらうことが可能で、希望者は多いという。

 4月中旬、米国から成田空港に帰国した青森県つがる市の会社員、野呂幸子さん(51)は「スタンプを見返すと、その国を旅したという実感が湧く。時代の流れだと思うが、なくなるのは寂しい」と話した。