【現場の風】VR体験店舗、地方や海外にも展開 バンダイナムコが得た「収穫と課題」

 

 ■バンダイナムコエンターテインメントエグゼクティブプロデューサー・小山順一朗さん(51)

 --昨年7月に東京・新宿に仮想現実(VR)技術を使った大型娯楽施設「VR ZONE SHINJUKU」をオープンした

 「業務用ゲーム市場は、2006年のピークから15年にかけて約5000億円まで半減した。主力はショッピングセンターのゲームコーナーに変わり、家族で楽しめるような画一的な構成になった。一方で従来のゲームセンターはマニア向けのものになった。1つのヒット商品で市場を変えるのが難しくなる中、多くの人が楽しめる新しい“超体験”を生み出す施設が必要だと感じた。それを、これまで体感ゲームなどで知見があったVRに求めた」

 --どのような特徴があるのか

 「16年に東京・台場にVRを使ったアトラクションを体感できる実験施設を作り、価格や顧客の満足度、(ガンダムなど自社グループが保有する)キャラクターの新表現、目的客を集められるかなど多くの知見を集めた。条件として、5分以内に客を感動させる、友達と共有したくなる感動、リピートしたくなる内容の提供にこだわった。外国人を含めた幅広い顧客を獲得できた。顧客満足度90%、リピート意向80%を超え、手応えはあった」

 --一方で課題も見えてきた

 「VRの性質上、その楽しさを伝えるのは難しい。会員制交流サイト(SNS)などで拡散を狙ったが、うまくいかなかった。体験するためのゴーグルなどの装備が重いため、まだまだ自由度も低く、運営コストも高い」

 --今後の展開は

 「新宿の旗艦店は19年3月までの期間限定だが、今後は同規模の店舗や小規模の店舗を、地方都市や海外にも展開していく。SNSでVRの楽しさを伝えられる方法も考えている。通信技術の飛躍的な向上で、近い将来は眼鏡のような軽装備でVRを楽しめるだろう」

【プロフィル】小山順一朗

 こやま・じゅんいちろう 日大理工卒。1990年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)入社。メカエンジニアとして体感ゲームに携わり、92年に海外のVR業務用ゲーム機を日本向けに展開。2016年4月から現職。静岡県出身。