白物家電の国内出荷額、20年ぶりの高水準 “新三種の神器”が好調
日本電機工業会(JEMA)が24日発表した2017年のエアコンや冷蔵庫といった白物家電の国内出荷額は前年比2.0%増の2兆3479億円で、1997年以来20年ぶりの高水準となった。増加は2年連続。白物家電は、韓国・中国メーカーの台頭と価格攻勢で、日本メーカーは苦戦。三洋電機や東芝が相次ぎ事業を手放すなど斜陽の感もあったが、省エネ性能の高い商品や付加価値の高い製品が浸透し、出荷額が伸びた。
製品別の出荷額では洗濯機が2.7%増の3277億円、エアコンが6.2%増の7232億円と牽引(けんいん)した。
日本製の家電は、かつては高品質が評価されて世界市場を席巻したが、コスト競争力に勝る中韓勢に市場を奪われ、三洋は12年にハイアール、東芝は16年に美的集団にと、ともに中国家電大手に事業を売却。稼ぎ頭の液晶テレビで完敗したシャープも台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となった。
これを踏まえ、日本勢は「低価格の汎用(はんよう)品では競争にならない」(大手電機役員)として技術力を生かした高付加価値製品にシフトを進め、日立アプライアンスは明確に「プレミアム戦略」を打ち出した。
白物家電出荷の好調はこうした戦略が奏功したものだ。具体的には、全自動洗濯機▽ロボット掃除機▽食器洗い乾燥機-という高機能の“新三種の神器”が家事の時短に貢献するとの理由で好調。量販店で約30万円もするパナソニックのドラム式洗濯乾燥機は洗剤の自動投入機能を備え、洗濯物を入れておけばネットにつながる「IoT機能」を用いてスマートフォンで遠隔操作できる。
水蒸気で調理するシャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」は単機能のレンジが2万円台で並ぶ中、人工知能(AI)が利用者の好みを学習しメニューを提案する機能が売りで、「約15万円の最上位機種から売れていく」(広報)。いずれも忙しい共働き世帯の家事軽減に役立つことが人気の理由だ。
ただ、成熟した国内市場は今後も買い替え需要しか見込みにくい。新たな牽引役の登場が待たれる中、パナソニックは家庭向けエネルギー管理システム(HEMS)とスマートスピーカー「グーグルホーム」を連携させ家電を制御するサービスの提供を始める。こうした新鮮味のある商品が今後どこまで消費意欲を刺激し、好調を維持できるかが注目される。(柳原一哉)
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