全国初、子供用の「白杖」来春発売へ キザキ、軽量化・グリップに工夫

 
子供の体格に合わせて軽量化やグリップ形状などについて工夫を重ねた子供用白杖=10日、長野県庁

 スキーやトレッキング用のポールなどを製造する「キザキ」(木崎秀臣社長、長野県小諸市)は10日、視覚に障害を持つ子供専用の安全つえ「白杖(はくじょう)」を、全国で初めて開発したと発表した。小さな体格の子供に合わせて開発された白杖はこれまでになく、子供は不便を強いられていた。(太田浩信)

 白杖は、歩行の際に前方の路面を確認して安全かどうかを知る大切な道具。視覚障害者が公道を歩く際は、道路交通法で携行が義務付けられている。しかし、子供専用の白杖は製造されておらず、大人用の白杖の一部を切断するなどして長さを調整してきた。

 利き腕の手首で扱うのが基本だが、大人用の白杖は筋力が弱い子供には重過ぎるうえ、グリップの形状も小さな手に合わなかった。このため、腕に負担がかかり疲れやすいことが、以前から指摘されていた。

 木崎社長が福祉器具の専門家から子供専用の白杖がないことを聞いたのは3年前。白杖の製造実績はなかったが、「子供のために使いやすい白杖を作りたい」との思いが募り、県立長野、松本の両盲学校の意見を聞いて開発に乗り出した。

 試作品は、子供の成長に合わせて伸縮させることができ、Sサイズ(長さ80~105センチ)とMサイズ(同95~120センチ)の2種類。シャフト部分の上部はアルミ製、下部はカーボン製で、重さは大人用の約半分に当たる200グラム程度という。使用者は、地面に接触させた際の震動を情報として受け取るため、しなやかさにも工夫を凝らした。

 さらに注力したのは、樹脂製のグリップ部分。左右どちらでも握りやすいような形状を考え、3Dプリンターで何度も試作を重ねた。現在は先端部分の形状を改良しており、来春には発売される予定だ。価格は1万円前後を想定している。

 県庁で行われた記者会見で、体験歩行を行った長野盲学校小学部6年の松下誠治君(12)=長野市=は「軽くて長い時間でも使いやすいし、長さ調節ができるのもいい」と評価。そのうえで、夜間帯の安全を確保するため、反射板をつければ事故の防止につながると提案していた。