レジで預金引き出し可能に 来年4月から 需要に期待、課題も

 

 スーパーや家電量販店といった小売店のレジで、銀行口座に預けたお金を引き出せるサービスが来年4月に始まる。現金自動預払機(ATM)が少ない地方での需要が見込まれる。宅配事業者が自宅にお金を届けることも可能になり、自由に動くことができない高齢者らに便利になるが、普及するには課題も多い。

 新しく始まるのは「キャッシュアウト」と呼ばれる仕組みだ。買い物の代金を口座から即時に引き落とすデビットカードを活用し、店で金額を伝えれば客はレジの現金を受け取ることができる。

 今年4月に銀行法施行規則が改正され、可能になった。大手銀行や地方銀行でつくる日本電子決済推進機構(東京)がルールを策定している。一度に引き出せる金額の上限は金融機関や店側が決めるが、5万円程度になる見通しだ。デビットカードでの買い物と同様に、店側が金融機関に手数料を支払う。

 病院の窓口で預金を下ろせるようになると、患者が病院外にあるATMまで行かずに済む。定期的に自宅を訪れて食品や雑貨を販売する業者が依頼を受け、現金も一緒に届ければ、過疎地に住む高齢者の利便性が向上しそうだ。みずほ銀行は「社会への貢献度が高い取り組みだ」と強調する。

 ただ、現時点で参加を表明している金融機関はみずほだけで、ほかの大手銀や地銀は様子見の姿勢。小売りでもセブン&アイ・ホールディングスなど自前で店舗にATMを置いている企業は「現時点で対応する予定はない」(同社広報)との立場だ。ほかの小売りでも、導入すれば集客増が見込める半面、手間がかかることや防犯上の懸念から判断が分かれそうだ。野村総合研究所の宮居雅宣氏は「地方の高齢者など一部の人は便利になるが、事業として成立させるには多くの課題を乗り越える必要がある」と話している。