コンビニ成長神話に陰り…出店数鈍化 各社、宅配や移動販売で新市場開拓

 
セブン-イレブン・ジャパンはセイノーホールディングスと行う宅配サービスを全国3000店舗に拡大する

 右肩上がりで成長してきたコンビニエンスストアの出店数が鈍化してきた。業界再編が進み、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3強で国内市場の9割超を占める。市場の“陣取り合戦”も終わり、各社は宅配や移動店舗など、従来とは違う新たな市場の開拓に知恵を絞っている。

 国内に5万4822店

 「新しくコンビニができても、あまり意味ないのになぁ…」。東京23区に住む30代の女性は自宅マンションから徒歩1分のセブン-イレブンをよく利用する。ところが昨年3月、自宅から同じような距離の場所に新しいセブン-イレブンがオープン。女性は「品ぞろえも一緒だし、あえて新しい店に行くことはないかな」と感想を漏らす。

 都心など収益が十分に見込める地域に集中して出店した結果、コンビニ店舗数は「飽和に近い状態」(ユニー・ファミリーマートホールディングスの高柳浩二社長)となっている。

 日本フランチャイズチェーン協会によれば、2017年3月末の国内のコンビニ店舗数は5万4822。前年同月と比べた増加率は2.2%増にとどまり、伸び率は年々鈍化している。出店余地も限られてきているのが現状だ。

 出店数の伸び悩みに加え、客数も頭打ちだ。4月の国内コンビニの既存店客数は前年同月比で0.5%減少。マイナスは14カ月連続だ。コンビニの「成長神話」に明らかに陰りが見え始めている。

 限られたパイをめぐり、国内のコンビニは業界再編が進んだ。昨年9月、ファミリーマートとサークルKサンクスが統合し、ローソンを抜いて店舗数で2位に浮上。3位のローソンも中堅コンビニのスリーエフやポプラとの共同店舗を増やしている。

 首位セブン-イレブンを含め大手3社に集約されたことを受け、各社が拡大路線から採算重視にかじを切り、出店数を絞り込んでいるのもコンビニの増加数が鈍化している一因だ。

 ファミリーマートに至っては、18年2月のグループ店舗数は1万7683店と、前年同月比で442店の減少を見込む。経営統合に伴いグループの「サークルK」と「サンクス」を「ファミリーマート」に統一する過程で、商圏が重複する一部店舗を閉鎖するためだ。

 人手不足も足かせとなりつつある。アルバイトの人件費が高騰し、コンビニ運営が苦しくなっている。このためセブン-イレブンは店舗オーナーから徴収する加盟店料を9月から1%減額し、加盟店の負担を和らげる。セブン-イレブンなどコンビニ大手5社は25年までに国内の全店舗に来店客が自ら会計する「セルフレジ」を導入することも発表している。

 買い物弱者に照準

 コンビニは、じり貧になってしまうのか-。こうした疑問にセブン-イレブンの古屋一樹社長は「高齢者や働く女性などにコンビニを使ってもらえる余地はまだある」と反論する。

 セブン-イレブンは、セイノーホールディングスと提携し、商品を自宅に配達するサービスを強化する。狙いは、ずばりコンビニ利用がこれまで少なかった買い物弱者だ。

 セブンは商品の宅配をセイノーに委託。試験的に約150店舗(3月末時点)で実施していた宅配サービスを、19年2月末までに全国3000店舗に拡大する計画だ。宅配時などに次の注文を聞く“御用聞き”も行い、コンビニとは縁遠かった高齢者や仕事などで忙しい女性のニーズをきめ細かくくみ取る。

 また、都市再生機構(UR)子会社と提携し、団地内に出店した店舗で電球交換といった生活支援サービスも提供する。UR子会社が団地内でセブン-イレブンを運営。コンビニを窓口に、水道トラブルの対処や粗大ごみの搬出といった生活周りのサービスを提供する。郊外の団地では高齢者が増える傾向にあるため、こうしたニーズが高いと判断。4月に東京都東村山市で第1弾となる店舗を開業し、今後、100店舗まで増やしていく計画だ。

 一方、移動販売を強化する動きも活発化している。ローソンは商品を積んで移動販売する専用車両を、17年度末までに100台に増やす方針だ。周辺に店舗が少ない地方や過疎地での需要を取り込む狙いで、セブン-イレブンやファミリーマートも移動販売に取り組んでいる。

 銀行のATM(現金自動預払機)やチケット販売、税金徴収、宅配ボックスなど、これまでにない新しいサービスを提供し、成長を続けてきたコンビニ。出店の伸びが鈍化しても、サービスの進化は続きそうだ。(大柳聡庸)