2020年東京ビッグサイト問題 売上げ1兆円消える…中小企業が大幅減収の危機

 
東京ビッグサイトで開かれる展示会。中小企業にとって絶好の商談の場だ=東京都江東区

 東京ビッグサイト(東京都江東区)が、2020年東京五輪・パラリンピックのメディアセンターとして使用されるため、最長20カ月間にわたり利用が制限されることに、中小企業の間から反発が起きている。期間中の展示会約500本が中止に追い込まれ、1兆円を超える売り上げが消えるとの試算もある。五輪特需が期待されていたが、展示会で多くの商談を成立させてきた中小企業からは、悲観的な声が強まる一方だ。

 「2年近くも展示会に出品できないのは死活問題だ」。5月上旬、ビッグサイトのIT(情報技術)展示会に出展した包装機械メーカー、印南製作所(東京都足立区)の印南英一社長は頭を抱える。

 大手と異なり営業や販売促進に人手をかけられない中小企業にとって、展示会は多くの来場者に商談を持ちかけられる、絶好のアピールの場。同社も1回の出展で総額1億円前後の商談を成立させることもあるだけにダメージはあまりにも大きい。

 システム開発を手掛けるシステムズナカシマ(岡山市東区)の橋本幸夫専務も「実物を見て担当者にいろいろ相談できるのが展示会。その機会がなくなるのは来場者にとっても残念なはず」と話す。

 毎年2回開かれ、国内外から毎回20万人前後の来場者を集める漫画同人誌展示即売会「コミックマーケット(コミケ)」も見られなくなる可能性が高い。同人誌印刷を手掛ける栄光(広島県福山市)の岡田一社長は「屋外のオープンスペースも広い東京ビッグサイトだからこそコミケができる。他では無理だろう」とあきらめ顔だ。

 15年度にビッグサイトで開かれた展示会は302件で、約1600万人が来場。年間延べ9万社が出展するが、その9割以上は中小企業だ。

 施設面積の約7割を占める東展示棟は改修工事を行う期間を含めると、19年4月~20年11月は使えない。もう一つの西展示棟も20年5~9月は利用できなくなる。大規模展示場の幕張メッセ(千葉市美浜区)も競技会場として使われるため半年程度利用できない。

 東京都は「仮設で対応するよう準備している」(小池百合子知事)という。約1.5キロ離れた場所に仮設展示場を設ける。だが、警備上の理由から五輪を挟む20年7~9月は使用を認めない方針だ。

 展示会の主催団体約300社からなる日本展示会協会の試算によると、20年3~9月に限っても3万8000社が出展できなくなり、約1兆2000億円の売り上げが消えるという。さらに装飾や警備、電気工事といった関連業界にも影響が及ぶのは必至だ。

 同協会の石積忠夫会長は「五輪には反対していない。ただメディアセンターは他に移し、いままでと同じように展示会ができるようにしてほしい」と訴える。同協会には会場の見直しを求める14万件超の署名が集まり、小池知事に解決を求めているが、中小企業が納得のいく解決策はまだ見いだせていない。