ドコモとソフトバンク、ドローン活用新展開 浮遊ディスプレー実用化 「新たな情報基盤に」
携帯大手各社による小型無人機「ドローン」の活用が新展開を見せ始めた。これまでは、モノの運搬や、搭載したカメラを使った点検などが主な活用法だったが、NTTドコモやソフトバンクは、映像を表示させながら浮遊するディスプレーとしての活用を実用化させる。世界初の「ドローンディスプレイ」を開発したNTTドコモの担当者は「自分の分身を映したドローンが飛んで行ってコミュニケーションするサービスなど、新しいビジネスにつながる」と話している。
LED枠を高速回転
ドコモの「ドローンディスプレイ」は、ドローンの周囲に配置した半円状の8本のLED(発光ダイオード)の枠を高速で回転させることで、LEDの残像による地球などの球状の映像を表示させる仕組み。ドローンを飛ばせば、空中に映像を表示させることもできる。
LEDの枠は、ドローンの4つの羽根を回転させるのとは別のモーターを使って回転させているが、LEDの枠を回転させると飛行するドローンのバランスが崩れるため、2つの羽根も別に備えている。
開発を担当したドコモ先端技術研究所の山田渉氏によれば、コンサートなどのイベント会場での案内表示板としての使用や、浮遊する球状の看板としての商用化が来年中にも可能だという。
将来的には、東京ディズニーランドのパレードで、ディズニーの妖精で空を飛ぶキャラクター「ティンカー・ベル」の映像を映しながら飛ばすことも考えられるという。
ただ、現段階では映像の解像度が低いため、高画質化することや長時間飛行できるようにすることも課題となる。
空中に映像を表示するドローンは、ソフトバンクの子会社でドローンの活用支援事業などを展開するソフトバンクコマース&サービスも、5月中に販売を開始する。
このドローンは、産業用ドローンの開発などを行うドローンワークス(千葉県柏市)が開発した。ヘリウムガスを充填(じゅうてん)した塩化ビニール製の風船でドローンの羽根などの駆動部分が覆われており、モーターが故障して落下した際も、ゆっくりと落ちてくるため羽根などで、けがをさせる危険性が少ないのが特徴だ。風船の側面などに広告を貼ることや風船部分に映像を表示しながら、イベント会場で利用することを想定している。
新たな情報基盤も
ドローンをめぐって、携帯各社はこれまで社会貢献的な活用方法を探ってきた。
ドコモは、離島で高齢者らの買い物支援のために商品の運搬の実験を実施したほか、災害時に携帯電話基地局が使えなくなった際に緊急用の基地局としても利用する。ソフトバンクも災害時の緊急用基地局としての利用や、雪山で遭難した人が所持している携帯電話の微弱な電波を飛行しながら探すなどの災害時の活用法を探っている。KDDIは、ゼンリンの3次元地図をベースに、複数のドローンを遠隔操作するシステムを開発した。
ドコモとソフトバンクの空中に映像を表示させる新しい活用方法も、当初は看板や広告としての活用がメインとなるが、災害時に避難所までの案内表示としての活用も考えられる。ドコモの山田氏は「空中に情報や映像を表示するのは、今までの携帯電話やスマートフォンなどと違う新しい情報のプラットフォーム(基盤)になり得る」と期待を込めている。(大坪玲央)
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