ここまで進化した「スマホ翻訳」 観光案内はもちろん「正露丸」をかざすと…
訪日観光客による消費が急増する中、商品や観光地に関する情報を多言語で紹介するサービスが広がっている。「通訳」を務めるのはスマートフォンやタブレット端末だ。パッケージなどにかざすと画面に詳しい説明が表示される仕組みで、おみくじに活用する神社も登場した。訪日客は安心して買い物や観光ができるようになり、店員の負担も軽くできそうだ。
海外販路の拡大にも
ドラッグストアの売り場に並ぶ胃腸薬「正露丸」。商品棚の前に貼り付けられた「QRコード」にスマホやタブレット端末をかざすと、商品写真と詳しい効能や用法用量の商品情報が、英語や中国語、韓国語、タイ語など複数の言語に翻訳されて表示される。
正露丸を販売する大幸薬品が昨年9月から始めたサービスだ。現在、東京と関西、福岡のドラッグストアで展開している。
同社マーケティング部の佐藤由佳さんは「以前から、店頭で訪日客に商品説明がうまくできない、という声があがっていた。こういったサービスを通じてインバウンド(訪日客)消費を促したい」と話す。さらには「訪日客から広まって、海外市場の拡大にもつなげていけたら」と期待を込める。
おみくじも多言語化
大幸薬品が導入したのはITベンチャー企業「PIJIN」(東京都)が特許を取得している「QRトランスレーター」。36言語に対応できるように設計されている。
QRトランスレーターは現在、正露丸などの個別の商品やレストランのメニュー紹介のほかに、奈良市や静岡県三島市といった自治体の観光地の案内板、サンシャイン水族館や東京ワンピースタワー、日光自然博物館などの施設案内でも利用されている。
京都市左京区の貴船神社でも導入され、おみくじの片隅に印刷されたQRコードを読み取ると、英語と中国語、フランス語などに翻訳される。導入後、おみくじをひく訪日客も増えているという。
PIJINの松本恭輔社長は「購買意欲を高めたり、新しい体験をしてもらえるきっかけになれば」と話す。「このモデルを海外にも輸出したい」といい、すでにパリのサクレ・クール寺院や、ネパールのパクタプル遺産でも案内用にQRトランスレーターが使われ始めているという。
神薬も詳しく中国語で
中国人観光客から「12の神薬」として人気の医薬品のうち「熱さまシート」「アンメルツ」など5製品を手掛ける小林製薬は、これらを含む20商品について、スマホを使って中国語で概要を説明するサービスを今年2月に始めた。
専用アプリをダウンロードしたスマホを商品パッケージにかざすと、特設の中国語サイトが表示される仕組み。同社は「花見のシーズンは訪日外国人も増える。商機に備えたい」と話している。
一方、特定の商品やメーカーに限らず、あらゆる商品情報を英語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語など多言語で閲覧できるアプリもある。バーコードで商品を識別、情報をインターネット上で集めて翻訳する「LOOK」だ。スマホでバーコードを読み取ってから、3秒ほどで表示される。
提供するベンチャー企業「チャプターエイト」(東京都渋谷区)の高野勇斗社長は「商品情報や価格の相場が分かれば、買いやすくなるのでは」と話す。
政府は、訪日外国人の消費額を2020年に8兆円にすることを目標に掲げ、訪日客けに高度で先進的なサービスを提供する「おもてなしプラットフォーム」の構築を目指している。
高野社長は「LOOKの仕組みも、日本の文化を知ってもらいたい、日本で良い体験をしてほしいというおもてなしの精神の上に成り立っています。国の取り組みにも役立ちたい」と話している。
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