米WH破産法申請の裏側で日米政府が“さや当て” 米国内で大量解雇の懸念強まる
東芝の米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が米連邦破産法11条を申請した裏側では、日米両政府による“さや当て”があった。原子力技術の流出や従業員の大量解雇につながりかねないことなどを懸念する声が米国内で強いためだ。日本側は、東芝再建に不可欠な措置として理解を求めたもようだが、4月に始まる日米のハイレベル経済対話でも課題になる可能性がある。
「潜在的な国家安全保障上の問題になりうる」
ロイター通信によると、米政府高官はWHの破産申請に対して強い関心を示している。日米両政府は、この問題について事務レベルで連絡を取り合っているが、米側の懸念は消えない。
米国内ではWHが破産法11条を申請することで、従業員数千人が一時解雇(レイオフ)になるのではと危惧する声がある。また、米政府はWHが受注したジョージア州の原発建設で電力会社に83億ドル(約9200億円)の債務保証をしており、建設が頓挫すれば国内の電力供給や財政負担など、多方面で悪影響が出るとみられる。
一方、日本政府は今のところ、「日本に何かしろとか、米国が何かするとかはまったくない」(世耕弘成経済産業相)と、米側から具体的な要請はないと説明する。
経産省幹部は破産法11条について、債権回収や訴訟が停止され、事業を継続しながら経営再建ができる「再建志向の法律」だと指摘。適用されても「米国内の原発建設が進めば問題はない」とみる。
東芝は今回、韓国電力に支援を打診し、WHに対する債務保証約8000億円を履行する方針を示すなど、事業継続に向けた環境作りに努めた。今後は、WHが策定する再建計画が米政府や地元の電力会社、金融機関などの理解を得られるかが焦点になりそうだ。
雇用創出を最大の公約に掲げるトランプ政権にとって、WH破産が失業者の増加につながるのは避けたい。日米両政府は16日の世耕氏とロス米商務長官の会談で、東芝に関する「情報共有の促進」で合意したが、再建の進捗(しんちょく)次第ではハイレベル経済対話でさらなる対策を迫られる恐れがある。(田辺裕晶)
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