東芝危機「国が支援を」 キヤノン御手洗会長、経済への悪影響懸念

 

 キヤノンの御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO)は6日、フジサンケイビジネスアイの取材に応じ、経営再建中の東芝が分社化を目指す半導体メモリー事業と縮小方針を示している原発事業について「国が支援や管理をする必要がある」と述べた。

 東芝が3月末をめどに設立する半導体メモリー事業の新会社への出資は見送ったが、東芝の経営危機が日本経済に及ぼす悪影響への懸念を示した。

 一方、キヤノンがデジタルカメラ、複合機に次ぐ成長の柱と位置づける医療分野の拡大に注力する考えを強調。東芝の医療機器子会社「東芝メディカルシステムズ」(栃木県大田原市)の買収を契機に、京都大と開発を進める乳がん検査用光超音波診断装置などを商品化したい考えを示した。主なやり取りは次の通り。

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 ■半導体出資せず、医療分野拡大

 --東芝の半導体メモリー事業への出資を募る入札が始まった

 「検討しようと考えたが、応札しなかった。昨年買収した東芝メディカルシステムズの補強などに必要な今後のM&A(企業の買収・合併)のための資金のことを考え、無理だと判断した。新会社の株式を投資ファンドなどを通じて取得することも考えていない」

 --東芝とは半導体露光技術で共同開発をしている

 「共同開発への投資は積極的に行う。東芝の半導体メモリーは日本が世界に誇る貴重なトップクラス技術で、国家的機関が支援すべきだ。原子力、エネルギーも一時的に国が管理し、国家事業として解決策を考える必要がある。東芝が債務超過となり、上場廃止となれば、株主、銀行、取引先企業に多大な影響が出る」

 --キヤノンの医療分野をどう拡大するのか

 「現在、技術の棚卸しをしている。画像処理、レントゲン、CT(コンピューター断層撮影装置)、ネットワークなどの技術だ。京都大とは乳がん検査のための光超音波診断装置を共同開発しており、商品化していきたい」

 --宇宙ロケット事業にも参入している

 「安価な民生用部品を使ったJAXA(宇宙航空研究開発機構)の小型ロケットの開発に参加している。人工衛星は世界各地の農作物の生育状況から温度まで観測でき、幅広い分野でニーズがある。また、技術はカメラなどの分野への応用も期待できる。時間はかかるが、引き続き取り組んでいく」