東芝、本体の資本増強検討 半導体参画企業などに優先株

 
東芝の資本増強の仕組み

 経営再建中の東芝が今年3月末までに、3000億円規模の資本増強を検討していることが分かった。分社化する半導体事業に参画する企業や投資ファンドに議決権のない優先株を引き受けてもらい、半導体の新会社の株式に転換できる権利を付与する方向だ。

 東芝は米原発建設で最大7000億円の損失が見込まれており、負債が資産を上回る債務超過に陥る懸念がある。東芝本体が単純に出資を募ってもリスクが高く難航が予想されるため、優良な半導体会社の株式に切り替える好条件を与え、異例の手法で決算期を乗り切る考えだが、ファンドなどが応じるかは不透明だ。

 東芝は3月下旬に臨時の株主総会を開き、半導体事業の分社化を決める。優先株を発行するための定款変更を同時に諮るとみられる。

 東芝が分社化するのは半導体事業の主力製品「フラッシュメモリー」で、3日に本格化した入札手続きには、このメモリーを製造する三重県の四日市工場に共同投資する米ハードディスク大手ウエスタン・デジタルや複数の外資系ファンドが参加したもよう。3月末までに相手を決めて増資を完了させたい考えだ。優先株を取得すると、半導体事業の分社化が完了した後に新会社の株式の19.9%に転換できる仕組みだ。複数の陣営が選ばれる可能性もある。

 半導体事業の入札には、当初は意欲を示していたキヤノンが見送る方針を明らかにしているほか、ファンド関係者からも「条件が悪い」との声が出ている。間接的とはいえ、東芝本体に出資することへの抵抗感も根強く、増資手法の再検討を迫られる恐れもある。

 東芝は2016年4~12月期決算を発表する今月14日に損失額や対応策を公表する予定だ。決算期末である3月末に債務超過に陥ると、東京証券取引所第1部から2部に降格するため、財務改善を迫られている。

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【用語解説】優先株

 普通の株式に比べて、配当を多く受け取れたり、会社解散時の財産配分で優遇されたりする株式。ただし、議決権がないなど株主としての権利を制限している場合が多い。通常の株式よりも引き受け手を見つけやすく、資金調達がしやすい利点がある。普通株に転換できる権利がついているケースも多く、企業再生の手法として活用される。