ビール大手4社の17年販売計画 酒税一本化を見据え「第3」と“二正面作戦”
国内ビール大手4社の2017年の販売計画が12日、出そろった。酒税の一本化を見据え、各社は減税されるビールに長期的には力を入れる方針だ。だが、節約志向を背景に、割安な発泡酒や第3のビールの人気も根強い。酒税の一本化は10年後のため、短期的には各社とも発泡酒や第3のビールも従来通り展開する“二正面作戦”の構えだ。
「ビールは長期的に強化する」。12日に会見したキリンビールの布施孝之社長は、20年から段階的に実施される酒税の一本化への対応をこう説明した。
まず、各社が取り組むのがビールの商品力アップだ。アサヒビールは、昨年苦戦したビール「ザ・ドリーム」を2月に大幅に刷新する。麦芽100%ながら糖質50%オフという機能性が売りで、主力「スーパードライ」に次ぐブランドに育てたい考えだ。
キリンは、地域ごとに味わいが違う「47都道府県の一番搾り」など、個性的なビールに力を入れる。風味にこだわったクラフトビールは専用サーバーを4月から飲食店向けに投入し、拡販につなげる狙いだ。
高価格帯のビールをてこ入れするのは、サントリービールとサッポロビール。サントリーは主力高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」を3月に刷新。サッポロも「エビス」ブランドの新商品を3月に投入する。
しかし、デフレ心理が色濃く残る中、安い発泡酒や第3のビールも消費者からの支持を集めている。キリンの布施社長は「(税率改定が段階的に始まる)20年までデフレが進んでいれば、発泡酒と第3のビールも強化しないといけない」と手綱を緩めない。税率は10年かけて統一され、一本化されてもビールとの価格差は残る。このため各社は一気にビールにシフトするのは困難な状況だ。
実際、今年の第3のビールの販売計画は▽アサヒ前年比2.6%増(ビールは0.9%増)▽キリン1.1%増(同4.9%増)▽サントリー1.9%増(同0.5%増)▽サッポロ4.3%増(同3.0%増)-と全社がプラスで、キリンを除く3社がビールを上回る伸び率を計画する。
低価格だけでなく、プリン体ゼロや糖質ゼロといった機能も、発泡酒や第3のビールならではの商品性だ。アサヒの平野伸一社長は「機能で売れている商品は、税率が一本化されても(売れ行きなどは)変わらない」と話す。
ただ、16年のビール類の国内市場は12年連続でマイナスとなったもようで、今年も1%程度の縮小が見込まれている。特徴のある商品を投入するなどで市場を拡大できなければ、安値販売でパイを奪い合う“消耗戦”に陥りかねない。(大柳聡庸)
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■ビール大手4社の2017年販売計画と16年実績
(17年計画/16年実績)
アサヒビール 1億6200(0.4)/1億6130(0.3)
キリンビール 1億3670(1.9)/1億3410(▲5.5)
サントリービール 6550(1.4)/6461(▲2.9)
サッポロビール 5060(2.1)/4955(▲0.5)
※単位:万ケース、1ケースは大瓶20本換算。カッコ内は前年比増減率%、▲はマイナス
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