キリンホールディングス社長・磯崎功典さん(63)

2017 成長への展望

 ■ビール・飲料ともに過当競争より協調

 --2017年の税制改正でビール類の酒税が10年かけて一本化されることが決まった

 「ビールの減税に関しては、もっと安くしてほしいという気持ちはあるが、長年の要望だっただけに評価している。一方、発泡酒と第3のビールは増税されるが、10年かけて対応していく。ただ、10年先を予想するのは難しく、どこのメーカーが有利不利というのはない。また、今回の税制改正に併せて(果肉などを加えてもビールとして認められる)定義変更があったことも評価している。風味にこだわったクラフトビールで、面白い商品が作りやすくなる」

 --米ブルックリン・ブルワリーと提携するなど、クラフトビールの強化を打ち出している

 「国内市場全体に占めるクラフトビールの割合は1%未満だが、5年程度かけて3%まで市場を拡大したい。ただ、キリンだけで成功することはあり得ない。競合他社と協力して、クラフトビールの文化をつくっていきたい。要請があれば、他社と原料の調達や委託生産などで協力していきたい」

 --国内ビール業界の再編は必要か

 「投資家は『再編してほしい』と言う。その理由はビール業界が過当競争だからだ。過当競争がなくなり収益性が上がれば、投資家も言わなくなるだろう。シェア争いというのは消費者にとっては意味のないことだ。各社が収益を重視し無意味な価格競争がなくなれば、業界再編は必要ないと考える」

 --赤字が続くブラジル事業の再建は

 「ブラジル事業は業績が回復してきた。15年12月期は多額の減損損失を計上したが、16年12月期は赤字幅が大きく縮小する。16年12月にビールや飲料を生産している工場を売却したが、今後も資産の圧縮を検討し、経営効率を高める。19年12月期にはブラジル事業を黒字化する計画だが、気持ちとしては時期を前倒しして黒字化したい」

 --飲料事業では、日本コカ・コーラグループと資本業務提携に向け協議している

 「飲料事業はプレーヤーが多く、ビールと同じく過当競争になっている。再編とまではいかないが、協調できるところは協調したい。傘下のキリンビバレッジは緑茶飲料『生茶』などが堅調で、営業利益率が15年12月期の1.5%から16年12月期は4%台まで改善する見通しだ。業界がもうかる体質にならなければ、株式市場からも評価されない。コカ・コーラグループとは物流や調達などで協調すべく話し合っている」

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【プロフィル】磯崎功典

 いそざき・よしのり 慶大経卒。1977年キリンビール入社。2008年キリンホールディングス執行役員、常務などを経て12年キリンビール社長。15年3月から現職。神奈川県出身。