夜行バスに個室備えた豪華車両 運行会社、相次ぎ投入 割高でも人気
夜行列車に代わる長距離移動の足として定着した夜行高速バスに、個室を備えた豪華車両を投入する運行会社が相次いでいる。多くは航空便の早期予約運賃よりも割高だが、人気は上々。時間を有効に使いたいけれど、疲れるのは嫌だし、長い乗車中のプライバシーは確保したい-。こうしたニーズをつかみ、若者やビジネスマンを中心に支持されているようだ。
福岡市を午後7時すぎにたち東京へ向かう西日本鉄道(同市)の夜行高速バス「はかた号」に記者が乗ってみた。前方に4席だけ設けられた個室は横80センチ、縦190センチ。東北新幹線「はやぶさ」のグランクラスのような白い革張りシートに腰を下ろし、通路側のカーテンを引くと完全に独立した空間になる。
14時間乗車も快適
個室内の照明は好みで調節でき、タブレット端末やコンセント、空気清浄機も完備。マッサージ機能も付いたシートは最大150度まで倒れ、身長185センチの記者でも約14時間の乗車を快適に過ごすことができた。
個室利用運賃は日によって変動し、普通席より5000円高い1万7000~2万円。約5時間で同区間を結ぶ新幹線の約2万3000円(指定席)よりは安いが、1万5000円以下にもなる航空便の早期予約運賃よりは高い。それでも、西鉄によると2014年の新設以来好評を博し、普通席より先に連日埋まる状態だという。
リピーターを自任する東京都小金井市の男性会社員(54)は「熟睡できて、到着日もフル活用できる」と魅力を語った。
高速バスマーケティング研究所(横浜市)によると、車両の豪華化はツアー会社の高速バス事業参入を促した02年の規制緩和がきっかけだ。比較が容易なインターネット予約が一般化したのも相まって、低運賃競争に加え、特色ある座席の開発が活発になったという。
シート幅拡大などを経て、06年にジェイアールバス関東(東京)と西日本ジェイアールバス(大阪市)が東京-大阪で個室シートを初めて導入。ウィラーエクスプレスジャパン(同)が08年に同じ区間で続いた。
流れは地方と大都市を結ぶ路線にも広がり、海部観光(徳島県美波町)は11年、全12席をテレビ付き個室にした「マイ・フローラ」の運行を徳島-東京で開始。両備グループ(岡山市)は、深い眠りを約束する特製シートを備えた全14席が個室の「ドリームスリーパー」を広島-横浜で12年から走らせ、よりグレードアップした車両を別路線にも投入する予定だ。
開発コストなど課題
ただ、車両の開発・製造費が高く、観光バスとしての使い回しもしにくいため、導入に積極的な運行会社はまだ限られるという。研究所の成定竜一代表(44)は「膨大な移動量がある東京-京阪神などでは、もっと豪華なバスも登場するのではないか」と予想した。
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