富士フイルム、武田の試薬子会社を買収 再生医療強化へ1500億円

 

 富士フイルムホールディングス(HD)は15日、武田薬品工業の子会社の試薬品メーカー、和光純薬工業(大阪市)を買収すると発表した。買収額は約1547億円と見込む。富士は、細胞培養向けの試薬や感染症の診断薬に強みを持つ和光を傘下に収め、再生医療や医薬品事業を強化する。

 和光は国内の試薬業界でトップクラスのシェアを握り、2015年度の売上高は794億円。富士は既に1割弱の株を持つ第2位株主で、子会社を通じて株式公開買い付け(TOB)を実施。筆頭株主の武田薬品グループが持つ約70%を含め、和光純薬の全株式を取得する。来年2月27日から4月3日まで買い付け、4月21日に連結子会社化する予定だ。

 富士は、18年度に医療分野で売上高1兆円の達成を目指している。会見した古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は「さらなる成長に向けた重要なマイルストーン(節目)だ」と意義を強調した。

 富士は和光の技術の中で、再生医療に欠かせない培地の生産技術に特に注目。これに、自社が持つ細胞培養の足場材や、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発・製造技術を組み合わせ、再生医療事業の拡大を目指す。

 目標に掲げる再生医療事業の黒字化について、富士の助野健児社長は「できるだけ前倒しする」と述べた。医薬品の開発製造受託や体外診断製品の拡販や開発などでもシナジー効果を見込み、「10年強で投資回収できる」とした。

 買収後は、和光の売上高を21年度に1000億円超に引き上げるのが目標。助野社長は「営業利益は180億円規模になる。富士の海外ルートを活用し、販路が拡大する」と説明した。

 一方、武田は和光株売却で得た利益を、膨大な費用がかかる新薬開発に振り向けて選択と集中を進め、国際的な競争力を強化する。