IoTで高血圧遠隔診療サービス ポート、年内に提供開始

 
IoTを用いた遠隔診療プラットフォームサービスによる血圧測定。患者の負担軽減と医療費の節約が期待されている

 インターネット関連事業を手掛けるポート(東京都新宿区)は、モノのインターネット(IoT)を用いた遠隔診療プラットフォームサービス「ポートメディカルβ版(ユーザーによる試用版)」の提供を年内に開始する。このため東京女子医科大学(東京都新宿区)と共同で、都市部での安全性と有効性を検証する実証実験に乗り出した。高血圧患者を対象に2019年3月末まで実施し、目標症例数450を目指す。遠隔診療は通院などの時間が不要で、医療費の節約にもつながることから成果が期待されている。

 高血圧患者全体の90%に当たる、原因を特定できない「本態性高血圧」で20歳以上が対象。週3回以上、自分で血圧を測定し、スマートフォンなどを通してデータをサーバーに送信する。担当医は定期的にデータを見て治療方針を決める。医師は患者にテレビ電話やチャット、メールなどで所見と治療方針を伝え、内服薬を処方し、薬は患者の自宅へ郵送する。数億円の実施費用はポートが負担する。

 日本の高血圧患者は4300万人と推定されているが、半数が病院で受診をしていないとみられている。無医地区だけでなく、利便性の高い都市部でも混雑した公共交通機関、仕事や子育て、介護などで通院を継続することが困難になり、症状を悪化させて重大疾患に陥るケースが多い。

 遠隔診療の利点について東京女子医大の市原淳弘教授は「通院や診察の待ち時間が不要になることで患者の仕事の効率や生活の質が向上する。また運動などに多くの時間をかけられるようになることで、これまで以上に健康増進を図れるだろう」と予測している。

 今回の実験に先立ち、ポートは6月から宮崎県日南市と連携し、無医地区で主に高齢者向けに地方型遠隔診療の検証を進めている。現在は高血圧のみが対象だが、糖尿病など生活習慣病への適用も検討していく。

 ポートは15年11月に、医師の診療から薬の処方、受け取りまでを可能とする国内初の遠隔診療プラットフォームサービス「ポートメディカル」の初期モデルを開発した。ポートの春日博文最高経営責任者(CEO)は「医療問題をテクノロジーで解決することで社会貢献したい」と話している。

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【会社概要】ポート

 ▽本社=東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産グランドタワー12階

 ▽設立=2011年4月

 ▽資本金=3億6901万円

 ▽従業員=130人

 ▽事業内容=インターネットメディア、人材採用支援、遠隔診療