「ついにここまで…」シーテックで垣間見た家電の未来 日本メーカーに勝機あるか

 

 デジタル家電や先進ITの展示会「CEATEC(シーテック) ジャパン」は国内最大、アジアでも最大級の規模を誇る。今年は10月4日から7日にかけて、千葉・幕張メッセで開かれた。テーマは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT(モノのインターネット)」という最も旬の技術。IoTの普及で家電や人はどのようにつながるのか。そして、“日の丸家電”の復権ののろしとなるか。(柳原一哉)

キラキラ輝くスカート

 会場でひときわ注目されていたのがパナソニックの出展ブース。黒山の人だかりのその中心には、華やかなコンパニオンの姿が。何本ものLEDが装着されており、点灯・消灯を繰り返す…。これが「人体通信応用デバイス」を使ったパナのコンセプト展示だ。

 このデバイスは、腕時計型のウエアラブル(身に着ける)機器を用いて人体に電界を発生。体の表面につくる弱い電気の層に、電子的な情報を流せるようになっている。

 ウエアラブルからの情報は電界を通じてその先にあるLEDに届き、点灯・消灯のほか赤、白など色の変更も指示する。まさに体を使った「人体通信」だ。

 パナの担当者は「この技術を用いれば家庭のどんな家電も触れるだけで操作が可能になる」と胸を張る。

 例えば、認証IDを用いて開閉する電子錠。ウエアラブルから錠の認証ID情報を流し、手でドアノブに触れるだけで認証IDを電子錠で認識させれば、もう物理的なカギは持ち歩かなくてよくなるだろう。

どんな家電も「操作は触れるだけ」

 同様に、テレビのチャンネル▽オーディオのスピーカー▽照明-なども「家電の操作はタッチだけ」。家電一つ一つに付くリモコンはもう不要という未来図が浮かび上がる。

 機器を装着した人と人同士で手をつなげば電子的に情報交換もできる。「例えば名刺データの交換も手をつなぐだけでOK」(担当者)という。ウエアラブルをインターネットに接続するだけで情報量は格段に増すから、IoT時代を見据えた技術というわけだ。

話しかけて家電を操作するロボット

 同じラクラク家電操作でも、パナが触れるだけならシャープは話しかけるという手法を採用した。同社はシーテック開幕前日の3日、ロボットの「ホームアシスタント」を発表している。

 どういうロボットか。例えば、エアコンの温度変更のシーン。ユーザーは自然に会話するように、「暑いからちょっと温度を下げて」などと話しかける。その音声がネット回線を通じてクラウド(ネット上のサーバー)に転送され、AIが指示の意味を認識。ホームアシスタントはリモコンと同じ赤外線通信によってエアコン側にその指示を伝えて操作するのだ。

 準備としてあらかじめホームアシスタントに家電のリモコン情報をセットしておくだけでよく、シャープに限らず他社製品にも対応するのがミソ。同社は来年前半にも発売する計画という。

 IoTなどを活用した家電操作の分野は、グーグルなど米シリコンバレーのIT大手も手がける旬の市場だ。挑む形の日の丸メーカーに勝機はあるのか。熱い戦いになることは間違いない。