リコー、回収プラを複合機に採用 3機種の出荷スタート
精密大手のリコーは、容器包装や一般家電に使用された回収プラスチックを複合機の部材原料として3機種に採用し、今夏から出荷を始めた。同社は1994年に環境経営ビジョンを定めており、今回の取り組みはその一環。すでに回収した自社製品を再生品として販売したり、自社製品由来の再生プラスチックを活用するなどしてきたが、欧米では、複合機などの機器への再生プラスチックの利用比率を環境規制に定める動きもあり、再生材活用という環境対策は時代の要請となりつつある。
90年代から独自実施
今回、リコーが採用した回収プラスチックは、容器包装リサイクル法に基づき回収された食品トレーや魚箱などのプラスチック製容器包装材と、家電リサイクル法に基づいて回収された一般家電から集めたもので、いずれもポリスチレン(PS)でできている。業者によって回収され、分解洗浄後、再生プラスチックとして加工・市販されることから市販回収材と呼ばれ、廉価なプラスチック製品の原料となるのが一般的だ。開発に携わったリコーテクノロジーズ第二設計本部新規開発室の原田忠克グループリーダーは「製品に搭載する以上、安定的に調達できる市販回収材の確保が必須だった」と振り返る。一般家電からのPSは三菱電機傘下のプラリサイクル業、グリーンサイクルシステムズ(千葉市緑区)と提携することで安定確保を実現した。
こうした異なる用途に使われていたプラスチックを原料とするには、難燃性や耐久性などを高める必要がある。このため、化学メーカーの新日鉄住金化学と共同でプラスチックの性質を変える「改質」の検討を実施し、石油由来の新品のプラスチック素材(バージン材)と同等の耐久性や難燃性を持たせた。リコーは回収した自社製品から出たプラスチック部材を再生し、自社製品に活用する独自リサイクルを90年代から実施している。再生材に対する知見が蓄積していたことで、改質検討は数年でできたという。
改質した市販回収材は、複合機の中でもプラスチック使用量の占める割合が高い給紙トレーと機内の内装カバーに用いた。自社製品由来の再生プラスチックでの再生材利用率は給紙トレーで2、3割程度にとどまっていたが、今回はその使用率を50%にまで引き上げられた。この結果、搭載機のプラ総重量に対する使用率はMP9003spで6.2%、MP6503spとMP7503spの2機種が6.3%となった。原油安でバージン材が割安になっていることもあって調達コストは市販回収材の方が若干高くなるが、「現状の価格差であれば企業努力で吸収できる」(原田氏)という。
海外規制が後押し
リコーの環境経営ビジョンでは、製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らすことを目標としており、中長期環境負荷削減目標で複数の数値目標を設定した。中でも、省資源・リサイクルに関しては、新規投入資源量を2007年度比で20年までに25%、50年までに87.5%削減するとの目標を掲げる。これまで、回収自社製品にメンテナンスを施し、「再生機(リコンディショニング機)」と明示したリユース機の販売を09年に開始。また、自社製品由来のプラ再生材の活用に加え、12年には金属部材に100%鉄スクラップを原料とした電炉鋼板を採用した複合機も開発した。同室の徳植義人副室長は「複合機の小型軽量化で新規投入資源量削減を進めてきたが、やり尽くした感はある。今回のマテリアルリサイクルが目標達成の一押しになる」とし、搭載機種を増やす方針だ。また、今回の市販回収材由来のプラ部材の再利用に向けた検討に入ったほか、プラ部材の油化技術も基礎研究を開始したという。
プラ回収材利用を後押しするのは、各国の環境規制だ。米国は13年導入の「EPEAT(イーピート)」で回収材5グラム以上の使用を必須とし、ドイツの「ブルーエンジェル」は筐体(きょうたい)プラ重量に対する回収材比率で5%以上を求めるとした。スウェーデンは15年2月、入札条件で、製品重量に対するプラ回収材比率を2%以上と定めた。複合機は総重量の2、3割がプラ系素材で、規制当局の動きは今回の取り組みの後押しとなりそうだ。(日野稚子)
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