東ガス、LNG基地建設やガス供給網整備 比、ミャンマー参入も

 

 東京ガスは12日、フィリピンとミャンマーのガス市場に参入する方向で検討に入ったことを明らかにした。来年度にも両国に拠点を開設し、国内事業で培ったノウハウを生かして液化天然ガス(LNG)基地の建設やガス供給網の整備などへの参加を目指す。来春の都市ガス小売りの全面自由化を控えて強化中の多角化戦略を推進するため、ガス需要の増加が見込める東南アジアを中心とした海外事業を積極展開していく。

 東ガスは、2014年にシンガポールに東南アジア統括会社を設立。これを皮切りに、翌15年にベトナム、インドネシア、タイに駐在員事務所を一気に開設した。1990年代に駐在員事務所を置いたマレーシアを含めると、現在、東南アジアでは5拠点体制となっている。

 事務所を開いたベトナムでは7月、現地の国営企業ペトロベトナム傘下のガス会社ペトロベトナムガスなどと、合弁会社を設立。20年をめどにLNG基地を完成させ、調達や販売を開始する予定だ。拠点開設からわずか1年で事業参加の機会を得られたベトナムでの成功体験から、拠点網のさらなる拡充が有利にはたらくと判断した。

 フィリピンとミャンマーについては「シンガポールの統括会社に両国のプロジェクトの話が多数入ってくる」(中村恒・海外事業部長)と、拠点設置を念頭に置いた現地視察も実施しているという。経営トップも東南アジア市場開拓に向け拠点拡充に一定の理解を示しており、年内に機関決定を得ることができれば、来年度にもフィリピンとミャンマーに進出する見通し。

 東ガスは4月に始まった電力小売りの全面自由化で、家庭用電力販売の「新電力」ではトップの約40万件の顧客を獲得した。だが、電力に続く、都市ガス小売りの全面自由化で攻める立場が1年後には逆転し、今の東京電力ホールディングス(HD)のように本業の防戦に追われることになる。

 厳しくなる国内事業を多角化で補う経営戦略の一環として、連結最終利益に占める海外事業の割合を09~11年度平均の10%から、20年度には25%まで高める目標を打ち出す。12~20年度に3200億円を投じる。東南アジアに加え、米国のシェールガス事業にも参加する。

 需要が旺盛な東南アジアで拠点を広げて人脈づくりに注力し、目標の達成に欠かせない優良案件の複数獲得を目指す。