東レ、企業向け健康管理事業参入 「スマートウエア」使い情報一元化

 
東レの新サービスで使われるスマート衣料

 東レは25日、ITを融合した次世代衣料「スマートウエア」を使った企業向けサービスに乗り出した、と発表した。工場などの作業者に、センサー機能付きの肌着を着せて、心拍数などの生体情報を取得。情報を一元管理し、体調維持や安全確保に役立てられる。スマートウエアはスポーツ用で一部商品化されているが、今回のサービス開始でさらに普及しそうだ。

 東レが始める新サービスの名称は「hitoe(ヒトエ)作業者みまもりサービス」。肌着の素材はNTTと共同で開発した。超極細のポリエステル繊維に電気を通す樹脂を染み込ませた特殊素材で、データを転送する小型端末以外は何もつけずに生体情報を取得できる。また、心拍数だけでなく、炎天下で働く際の体への負荷や、転倒したかどうか、心理的に落ち着いているかなど、計7項目の情報を得られる。

 情報は、市販のパソコンやスマホで閲覧・管理できる。1人当たりの料金は月額4000円で、肌着(1枚1万800円)とデータ転送用の小型端末(1個1万800円)が別途必要。2016年度に4000万円、18年度に2億円の売り上げを計画している。

 東レは、14年12月にスポーツ大手のゴールドウインが発売した男性用アンダーウエアなどに今回と同じ素材を提供。今年4月下旬からは、グループの自社工場などでサービスを先行導入してきた。こうした取り組みの結果を踏まえ、工場以外にも建設や輸送など幅広い現場で利用が見込めると判断、サービスの外部提供を決めた。

 スマートウエアは、従来の衣料と同じ感覚で気軽に着られるうえ、情報を高精度で取得できるため、将来的には腕時計型端末や眼鏡型端末をしのぐ市場に育つとの見方もある。

 このため、東レ以外の繊維大手も開発を強化している。東洋紡は、電気を通す材料をウレタン樹脂で挟んだフィルム状の素材で、心拍数や心電図データを得られる「COCOMI(心美)」を開発。今年7月には競走馬の心拍数を測る目的で、くらを固定する腹帯のカバーに採用された。帝人も、関西大などと新素材開発を進めている。

 一方、海外でも米グーグルと米リーバイ・ストラウスが、袖の一部を指でなぞったり、たたいたりするとスマホを操作できる「スマートGジャン」を来年春に発売。今後は世界的に競争が激化しそうだ。