ポスト「京」スパコンに初の7ナノ半導体 100倍の処理性能…大幅に上回るか

理化学研究所と富士通が2021年度中の運用開始を目指して共同開発している次期スーパーコンピューター(ポスト「京」)の設計を抜本変更し、新たに線幅が7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端半導体を初めて採用することが19日、分かった。計画では現行の「京」に比べて100倍の処理性能を目指しているが、実際には大幅に上回る見通しだ。欧米や中国でも同様の開発計画がスタートしており、スパコンの処理速度競争は激しさを増しそうだ。
毎秒1エクサ回超
ポスト「京」は、理研の計算科学研究機構(神戸市)に設置している現行の「京」に比べ、100倍のアプリケーション実効性能を目指している。ピーク処理速度は毎秒1エクサ(エクサは兆の100万倍)回レベルを想定している。
ただ、当初は心臓部に当たるCPU(中央演算処理装置)に搭載する半導体の線幅を10ナノメートルで基本設計していたが、より微細な7ナノメートル半導体技術が実用化レベルに達したことから設計を抜本的に変更。7ナノメートル半導体を使った試作・詳細設計を当初より1年近く遅い17年度中とした。
メモリー積層化技術やデータ伝送技術もレベルアップさせ、システム性能を大幅に向上させる。官民合わせて総額約1300億円という開発予算や、消費電力を「京」の3~4倍に抑えるという制約を考慮しても、演算速度は最大で毎秒1エクサ回を上回る見通しだ。
理研は10日、ポスト「京」の開発状況報告で、性能目標は当初通りとする一方、開発スケジュールが20年度から1~2年遅れると発表した。ただ「順調に進めば(遅延は)1年以内」(フラッグシップ2020プロジェクト企画調整室)で、21年度中の運用開始を目指す。
命令仕様あす発表
富士通はポスト「京」の半導体の論理設計に英アームと共同開発した汎用(はんよう)性の高いスパコン用命令仕様を採用する。設計した半導体は受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が7ナノメートル技術でいち早く量産する計画だ。
アームの命令仕様に基づく半導体のシェアはスマートフォンで95%、ストレージ(外部記憶装置)で90%に達している。21日には富士通と協力して開発した高性能コンピューター用命令仕様を発表する予定で、スパコン分野に本格進出する。
スパコンの演算性能は、6月に発表された計算速度ランキングで、中国の新機種「神威太湖之光」が毎秒9.3京(京は兆の1万倍)回で、日本の「京」より約10倍速かった。2位も中国の「天河2号」で、3、4位が米国。11年に首位だった「京」は5位に順位を下げた。
次期スパコン開発をめぐっては、EU(欧州連合)や中国も20年までにエクサ級の性能を目指して政府プロジェクトを推進。米国もオバマ大統領命令で20年代初めにエクサ級機種の開発を目指している。
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